Illustration by Diana Bolton

人材不足の中で退職者が相次ぎ、企業は穴埋めに必死だ。成長曲線を軌道に戻すには、さらに新規採用を進めていかなくてはならないだろう。しかし、新規採用に注力するあまり、既存の従業員のことを蔑ろにしがちにしていては、本末転倒だ。そもそも、事業を安定させるには、離職を食い止め、組織に留まる従業員を増やしていかなくてはならない。厳しい状況下でも献身的に働き、多くの貢献をする従業員を正しく評価し、定着率を高めるためにリーダーは何をすべきか。現在の大退職時代(グレート・レジグネーション)を最善の形で乗り切るために、リーダーが取るべき4つのステップを紹介する。


 少しでも疑問を抱いていた人には、最新データを見てほしい。大退職時代(グレート・レジグネーション)は現実のものとして、いま、まさに進行中である。

 米労働省は、2021年4~6月の間に計1150万人もの労働者が離職したと発表している。そして、この流れは続きそうだ。ギャラップの調査によれば従業員の48%が積極的に転職先を探しており、パーソニオの調査では1対4に近い割合で今後半年間での転職を予定しているという。

 転職の機会を探している人々は、絶好のチャンスを迎える。米国では2021年6月に、1010万という過去最高の求人数を記録した。

 こうした動向は、あなたの組織にどのような影響を及ぼすだろうか。おそらく、あなたはいま、2つの喫緊の課題に直面し、どうにかバランスを取ろうとしているところだろう。すなわち、離職による空きポジションを埋める人材を採用すること、そして事業拡大を支えるための人材を採用することである。

 人材が不足しているのは事実だ。多くの求人に対して、応募する人の数があまりに少ない。この需要と供給の不均衡から、生産性とは人材に関する問題であることが、かつてないほど注目されるようになった。

 事業を安定させる最善の方法は、離職の津波を食い止め、組織に留まる従業員を増やすことである。「とにかく人材を採用しなくては」と必死になっていると、会社を辞めずに残っている人たちのことを後回しにしがちだ。毎日欠かさず出社し、なすべき仕事を日々担っている人々である。

 いま、あなたが考えるべきは、そのようにして組織に留まり、あなたのために、あなたと一緒に働いている人たちが、いま何を必要としているか、だ。

 彼らの存在と貢献を、組織の側にきちんと目に見える形で認識してもらうこと。これが端的な答えである。リーダーであるあなたの仕事は、いま目の前にいる従業員が、正当な評価を確実に受けられるようにすることだ。

 従業員がどのような思いを抱えているか、すぐにわかるだろう。あなたは雇用者、リーダー、マネジャー、あるいは人事の専門家として、ここに至るまでに数多くの不確かな状況や変化に対処してきたのだ。

 やるべきことは常に山積みである。仕事を成し遂げるには、適切な人材が、適切な場所に、適切な人数いなければ「ハムスターホイール効果」が生じる。つまり、ハムスターが回し車を走るように、ひたすら走り続け、そのスピードがどんどん速くなり、自分では制御できない力のせいで疲労困憊してしまうのだ。

 したがって、自分でコントロールできるものをコントロールすることが大切になる。すなわち、あなた自身だ。組織やチームの離職率を下げたい場合、みずからの内面を見つめ、自分には何ができるのかを、あなた自身が考えて決める必要がある。

 そのためには、回し車の回転を少しの間、止めてみることだ。走るのをいったん止めて、自分が影響力を発揮するには何ができるのか、どのような方法で対処しうるかを考えるのだ。

 大退職時代(グレート・レジグネーション)を最善の形で乗り切るために、リーダーが取るべき4つのステップを、以下に紹介しよう。