Дмитрий Ларичев/Getty Images

新型コロナウイルス感染症によるキャンパスの一時閉鎖を機に、大学運営は急速な変化を余儀なくされた。この変化で得られた利点を一過性のもので終わらせず、キャンパス内の寮で暮らしながら対面講義を受けるスタイルと、リモートで講義を受けるハイブリッド型を前提としたモデルに転換できれば、学生の受講体験を向上させるだけでなく、在校生の多様性を高めたり、より多くの社会人学生を獲得したりすることができる。


 新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、高等教育の変化の必要性が浮き彫りになったという見方に、異論がある人はほとんどいないだろう。

 大学の在籍者数は2019年秋から2020年秋にかけて3%減少し今後予測される在籍者数も減少傾向にある。そうなると、多くの大学は財政難を乗り切るために、事業展開を見直す必要が出てくるだろう。一方、予測以上に健闘している大学は、この1年半の緊急対応による変化をてこに長期的価値をつくり出すという、数十年に一度のチャンスを目の前にしている。

 長期的価値の実現のために、大学はいますぐに行動を起こす必要がある。アクセスの障壁を取り払い、より広範で多様な学生を取り込み、労働者の変化するニーズに応え、生涯教育と就業機会を社会人に提供することが必要となる。

 2020年、パンデミックで高等教育が大きな痛手を受けたことは疑いようもない。だが同時に、次にやるべきことも明らかになった。コロナ禍のおかげで対面講義とオンライン学習のハイブリッド化が加速したことについては、すでに多くの分析がなされている

 突然の変化で著しい混乱が生じたとはいえ、長期的には、このハイブリッドモデルは受講体験を大いに向上させるだろう。たとえば、新しいデジタルツールによって、講師は学生のエンゲージメントをより正確に評価できるようになった。こうしたツールは、講座の内容や教授法を磨き向上させるための明快なロードマップを提供してくれる。

 この激動の年からは、教室の枠を超えて他の教訓も得ることができた。パンデミック初期の2020年夏、デロイトの「センター・フォー・ハイヤー・エデュケーション・エクセレンス」ストラダ教育ネットワークは、高等教育のリーダーを集めて1つの議題を話し合ってもらった。それは、学生がキャンパス内の寮で暮らすことを前提にした従来型の対面教育が破壊されたことから、今後の大学の事業展開と学生サービスのあるべき姿にどんなヒントが得られるか、である。

 リーダーたちの調査と議論から出た結論は、教育のハイブリッド型アプローチをカリキュラムに適用するだけでなく、学習体験を促進しキャンパスの運営を成り立たせる他の重要要素、すなわち学生サービスと労働力にも拡大すべきというものだった。

 筆者らが「ハイブリッド型キャンパス」と名付けたこの概念は、現在のハイブリッド型教育の枠を超えた、より包括的なビジョンである。学術的な助言からキャリアサービスまで、高等教育機関が提供するすべてを包含する。

 大学にとっては、デジタル技術への新しい投資(およびそこから学んだこと)を活かして、学生の体験を向上させ、リモートワークへの移行を進めるチャンスになる。適切に進めれば、このアプローチを通じて大学はより学生中心の場となり、持続可能性を確保できるだろう。

 ハイブリッド型キャンパスは、物理的世界とデジタル世界の中間に位置し、かつその2つがほとんど区別されない小売モデルに似たものと考えてほしい。オンライン店舗を始めた多くの小売業者は、実店舗を営業することでウェブサイトでの売上げを押し上げ、顧客ロイヤリティを高めている。ほとんどの顧客は2つの世界を区別していない。

 ここで重要なのは、物理的な世界とバーチャルの世界が互いに補完し合う点だ。異なる領域やアイデンティティをつくり出しているわけではない。