ハイブリッドワークを成功させるための
2つのポイント
新たな働き方の選択肢としてコロナ禍に登場した「ハイブリッドワーク」は、在宅勤務とオフィス勤務を組み合わせ、自分で選択していく柔軟性のある新しい働き方のことを指す。グラットン氏が、『ハーバード・ビジネス・レビュー』に寄稿したハイブリッドワークについての論文には大きなポイントが2つあるという。
「1つは、働く場所だけでなく、働く時間の柔軟性についても考えること。もう1点は、その仕事が何を求めているのかといったことに注目し、生産性を高める働き方をすること。そうしないと、1年後、ハイブリッドワークは失敗だったとされてしまうでしょう」と彼女は危惧する。ワイブリッドワークが正しく行えるよう、このポイントを念頭に置いて意図的に努力する必要性があるのだという。
またいまは多用される「ハイブリッド」という言葉だが、今後は廃れ、 代わりに“同期(シンクロナス)と非同期(エイシンクロナス)”がよく使われるようになるだろうと、グラットン氏は述べた。
「パンデミックでは、物理的に一緒にいなくても“同期”する場面が増えました。たとえばいま、あなた(インタビュアー)と私はバーチャルな同期がうまくいっています。2人とも東京にいる必要はないのです。また、私は最近までIBMの最高人事責任者だったダイアン・ガーソンとはもはや親友のような関係ですが、まだZoomでしか話したことがありません。オンラインだけでも友人はつくれるのです。“同期(シンクロナス)と非同期(エイシンクロナス)”という言葉は、ハイブリッド以上に大切な概念になると思います」。そう話す。

最後に、パンデミックの収束後、再びオフィスに戻った時に関係性を回復するために何をすればいいかという質問に「オフィスに戻ってきても、全員がイヤホンを着けて作業するなら、家にいるのと同じで何の意味もありません」とグラットン氏は言う。つまり「オフィスは、人々が実際に集まって対面でクリエイティブに語り合い、協力する場となるべきです」。そう述べて、講演が終わった。
ハイブリッドな働き方でも
生産性と創造性を高めるには
そしてセミナーの最後の講演に登場したのは東京大学大学院の稲水伸行准教授。稲水氏は、「オフィス学プロジェクト」として、6年ほど前からワークプレイスやワークスタイルにまつわる現象を社会科学の観点から、企業と共同で分析・研究をしている。生産性・創造性を高める組織環境要因を明らかにすることを目的としているためだ。
今回は日本マイクロソフトを例に挙げて話が進んだ。日本マイクロソフトは、2007年から在宅勤務制度導入を開始し、2011年の東日本大震災を機に働き方改革を進め、現在はワークライフチョイスチャレンジといって、週4日勤務(週休3日)を実施す部署により取り入れるなど、さまざまな取り組みも行ってきている。結果として年間売上高は過去10年で180% =約2倍となり、生産性が上がっている。
今回、稲水氏は、「ハイブリッドな働き方でも生産性と創造性を高めるには」というテーマで、在宅勤務といったワークスタイルでもどのようにクリエイティビティを高めていくか、という、非常に興味深い研究結果を語った。
