●全社的な規範を設ける

 多くの従業員が、リモートワークによって柔軟性が高まったことを高く評価しているが、そこには「常時オン」いう重大な欠点、すなわち毎日24時間週7日体制で対応できなくてはいけないという考え方がある。

 これに該当する人は調査対象者の3分の1以上を占め、自分がバーンアウトしていると回答する可能性がずっと高かった。

 マネジャーの重圧を取り除くには、企業は基本的な就労規範を確立しなければならない。たとえば、就業時間外のコミュニケーションを制限するルールを設けたり、期待される応答時間を明確に定めたりするのだ。

 現在、そうした対応策はほとんど講じられていない。「従来の就業時間外にリクエストが届いても、緊急でなければ応じる必要はない」という明確なルールが会社にあると答えた従業員は、全体の20%にすぎなかった。

 企業はまた、勤務評価が深夜のメールに迅速に対応するかどうかではなく、あくまでパフォーマンスに基づくことを明確にしなくてはならない。そして、何より重要なこととして、マネジャーはみずから率先して模範を示すべきだ。すなわち、インターネットに接続するのをやめ、健全な境界線を設定して、「常時オン」でなくてかまわないことを体現するのである。

 ●マネジャーに研修を行い、必要なリソースを提供する

 マネジャーが従業員のウェルビーイングをサポートすると、従業員が職場で幸福を感じられる可能性が25%高まる。

 しかし、企業はまず従業員が職場で直面する困難に気づき、マネジャーの存在が解決策の一部になるようにしなければならない。たとえば、チームの状態を簡単に把握できるアンケート調査などのツールを、マネジャーに提供するのだ。

 次に、その気づきを行動に変える必要がある。マネジャー向けの研修を定期的に開催したり、必要なリソースを提供して、バーンアウトを発見する方法、メンタルヘルスの問題を理解してその重要性を主張するアライの役割、インクルーシブリーダーになる方法を教えたりすることだ。

 筆者らの調査では、強力なアライがいる従業員は幸福度が高く、バーンアウトする可能性が低いことが示されている。にもかかわらず、この1年間でアライシップに関するトレーニングを受けたことのある従業員は14%にすぎなかった。

 マネジャーは最前線で従業員をサポートし、こうしたポジティブ行動の模範を示さなくてはならない。しかし、そのためには、企業が明確な投資を行い、よりよい職場づくりに向けた強い意志を示す必要がある。

 ●マネジャーによる従業員支援を正式な形で評価する

 経営幹部はマネジャーに対して、ストレスと疲労を軽減させる取り組みを増やすよう呼びかけ、それが実行された時には報酬を与えなければならない。現時点では、どちらも不十分だ。

 たとえば、企業の3分の2はマネジャーに対して、従業員の仕事量とウェルビーイングを確認するように指示を出してはいるが、そうした努力は一般的に、正式な評価や勤務評定の対象には含まれていない。

 筆者らの調査では、女性マネジャーはこうした取り組みを強化する可能性がはるかに高い。しかし、正式な職務内容に含まれていなければ、このような努力は見落とされてしまいかねない。

 企業がバーンアウトに有効に対処するには、マネジャーが直属の部下をどのようにサポートしているかを、勤務評定の中で評価すべきだ。アカウンタビリティ(説明責任)と正式な評価が伴わなければ、この極めて重要な業務が「オフィス家事」に格下げされるか、会社に貢献するものの昇進や報酬にはつながらない業務となりかねない。

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 全社的なアクションは、マネジャーがバーンアウトに対処するためにいま行っている業務に対して、正式な敬意を払うものだ。バーンアウトは悪化傾向にあるが、本稿で紹介した対応策は、その流れを変えるカギになる。

 女性は、バーアンアウトの究極のジレンマに陥っている。男性よりもバーンアウトに苦しんでいるにもかかわらず、それと戦うために男性よりも多くの取り組みを行っているのだ。

 マネジャーはバーンアウトを発見し、それに対処する最善の立場にあるが、経営幹部にも果たすべき役割がある。規範を確立し、マネジャーに権限を与え、その努力を正式な評価に加えるのだ。そうすることで、企業はよりよい職場をつくると同時に、女性を支援するというウィン・ウィンの状況を生み出すことができる。


"Women Do More to Fight Burnout - and It's Burning Them Out," HBR.org, October 22, 2021.