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仕事にパーパスを見出して情熱的に取り組めている従業員は、給与のために働いている従業員と比べて、職務満足度や人生の満足度が高い。ただし、だからといって彼らが優れたパフォーマンスを上げているとは限らない。部下が仕事に取り組む動機や姿勢を重視しすぎると、昇給や昇進に足る十分な成果を上げている人材が適切に評価されないおそれがある。


「好きなことを仕事にすれば、一生働かなくて済む」という言葉がある。それが本当かどうかはさておき、仕事の使命を見つけることが至高の目標になっているのは理由がある。

 個人的な達成感を得て、世界をよりよい場所にするために働く人、つまり「使命志向」の従業員は、主に金銭のために働く「職務志向」の従業員よりも職務満足度や人生の満足度が高く、成功を実感できていることが、調査明らかになっているからだ。

 しかし、客観的に見て、彼らはキャリアで成功しているのだろうか。より高い給与や組織の地位を得ているのだろうか。

 この疑問に応える研究は、わずかだが存在する。使命志向か職務志向かという違いが、実際の仕事のパフォーマンスにどう影響するかに焦点が当てられている。

 研究結果によると、使命志向の従業員は、仕事に多くの時間と労力を費やす傾向がある。しかし、彼らは現実的ではなく過度に理想主義的だったり、組織の成功に結びつかない方法で慣行を批判したりすることがよくある。つまり、好きなことをやっていても、それがうまくいくとは限らないのだ。

 しかし、香港大学ビジネススクールのユナ・チョーと筆者は最近行った共同研究で、使命志向の従業員は、実際に高い給与と組織の地位を得る傾向にあることを示す証拠を発見した。

 彼らは必ずしも優れた仕事をするわけではないのに、なぜ成功するのか。筆者らの研究によれば、マネジャーが使命志向の人に好意的あることが要因だと考えられる。

 このことは、マネジャーにとって非常に重要な意味をもたらす。マネジャーは、自分がこのようなバイアスを抱いていないかを確認する必要があるのだ。

 バイアスを無視すると、従業員のモラルが低下したり(職務志向のチームメンバーが、使命志向の同僚のほうが優遇されていると考える)、資格のない候補者が昇進したり、仕事への情熱を偽って表現することを助長したりする可能性がある。

 また、昨今は職務におけるパーパスや情熱が注目を浴びているが、プロフェッショナル一人ひとりが、仕事に使命感や情熱を持つことが成功の必須条件である、という考え方を改める必要があることも研究結果は示唆している。