●いますぐ準備を始める

 初産の母親向けのリソースや利用可能なケアサービスについては、適切なベビーカーやベビーシッターを探すのと同じように、しっかりとリサーチを行い、必要な時はすぐに利用できるような準備をしておかなければいけない。妊娠中、育児休暇中、復職後を問わず、いますぐ始めよう。

 サービスによっては、医療保険や会社の福利厚生でカバーされる場合もあるので、かかりつけの産婦人科医や所属先の人事部門に問い合わせてみる。サービス提供者の連絡先、料金、利用規約などを把握しておくことも大切だ。

 当てが外れたり、慌てて搾乳器の交換部品を探したり、ケアギバーを見つけなければならない状況は、事態を悪化させるばかりである。また、調査に時間がかかることも覚悟しておこう。需要は非常に大きいが、公的支援は限られているのだ。

 ●徐々に復帰し、うまくいかない時もあることを知る

 サラは、いっきに仕事を再開したために、誰にも話せず苦しむという失敗を経験した。あなたの職場に育児休暇があり、それを取得している約20%の女性従業員の一人ならば、柔軟性のあるセルフサポートの道がいくつかある。スムーズに復帰するには、リモートワーク、移行を助けるピアメンタリング、あるいは家計が許せば段階的に復帰するといった選択肢もあるだろう。

 たとえ十分な準備をしていたとしても、約束や保証はない。職場復帰のプレッシャーに耐えるだけの準備ができていない、あるいは少なくともいまはまだ準備できていないと感じることもあるかもしれない。

 雇用主に相談して、どのような選択肢があるかを確認する。面倒見のよい組織文化と上司のサポートがあれば、サラのケースとは大きく違ってくるはずだ。上司は、あなたが最高の状態で仕事に復帰することを望んでいるのだと覚えておこう。

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 サラは結局、専門家に助けを求めた。時間はかかったが、熱心に回復に取り組み、私生活でも仕事でも復帰を果たした。実際のところ、AJの誕生はサラにとって、キャリアにおける次の段階、すなわち起業家に転身するきっかけとなった。

 彼女が始めた事業は、自身のライフスタイルに合っていたばかりでなく、ビジネスとしても成功を遂げた。また、公私ともに自分のニーズに合った人間関係を築くこともできた。

 PPDのすべての症状に対処できる万能のアプローチはない。しかし、産後の心身の健康に投資することは、自分のキャリアに対する投資であり、子どもを持ったばかりの母親として、そして一人の女性としてのウェルビーイングに対する投資でもある。

本稿は、HBRワーキングペアレンツシリーズの書籍Succeeding as a First-Time Parentからの抜粋である。


"Navigating Postpartum Depression at Work," HBR.org, November 01, 2021.