2015年にアルファベットとしてリブランディングした際のグーグルは、まさにその順序をたどっていた。リブランディングに至るまでに何年も要し、その間に同社の事業は検索エンジンサービスをはるかに超えて広がっていた。新しい名称を採用した時には、自動運転車から医療機器、スマートホーム製品まで、幅広い企業と商品を包含するテクノロジーのコングロマリットになっていた。そのため、ブランド変更は理にかなっていた。

 さらに、グーグルと他のグループ企業との関係を効果的に最大限縮小したことで、グーグルは、新興テクノロジーに対する懸念(ドローンは「不気味」、自動運転車は危険、など)から守られた。また、同社のグループ企業は、金融業界がグーグルに抱いている利潤期待から守られたのである。

 フェイスブックは名称を改めても、ソーシャルメディア事業とメタバースや他の開発事業を効果的に分離できない。なぜなら、そもそも後者は未成熟だからだ。

 もちろん、すべての企業がパブリックイメージの回復のために、名称変更に頼るわけではない。たとえば、マイクロソフトの変革を振り返ってみよう。

 マイクロソフト会長兼CEOのサティア・ナデラは、会社の立て直しと批判への対処に乗り出すと、人工知能(AI)、モバイル、クラウドファースト戦略を取り込み、提携を求め(リナックスなど)、積極的に買収を行い(リンクトインなど)、すべての事業でデジタル改革を実施した。何より、内紛と惰性を特徴としていた企業文化を、コラボレーションと顧客第一主義を通じて成長し学習する組織へと変えた。

 それでも、マイクロソフトは社名を変更したり、変化を宣伝する企業キャンペーンを実施したりする必要性を感じなかったようだ。それよりも事業と文化を変革することで事業を再興し、世論を変えた。同じようなことがフェイスブックで起きている兆しは、まったくない。

 多くの人は、ブランドは約束だという。ただし、ブランドとは果たせる約束でなければならない。フェイスブックはリブランディングで、いますぐ果たせないような約束をしている。真の変化を遂げたことを示すまで、メタは、看板を替えただけの旧態依然としたフェイスブックにすぎないだろう。


"Facebook's Rebrand Has a Fundamental Problem," HBR.org, November 02, 2021.