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従業員の中に相当数の女性がいるにもかかわらず、組織の階層が上がっていくにつれ女性の割合が減少する。そのような例は枚挙にいとまがない。ジェンダー多様性の必要性が叫ばれる中、採用時や定着率に男女差がなかったとしても、昇進の男女差があれば、本質的な問題解決は遠ざかる。そこで筆者らが提唱するのが、「ジェンダー比例原則」(GPP)だ。ある階層のジェンダー割合をすぐ下の階層のジェンダー割合と同じに引き上げて、上位階層の女性を増やすことを目指す。本稿では、この原則の活用例を紹介しながら、ジェンダー平等を実現するための道筋を論じる。


 次のようなシナリオを考えてみてほしい。

 ある会社のエントリーレベルの従業員は男女がほぼ半数ずつを占めているが、階層が上がるにつれ女性の割合が減っていく。女性の比率は、マネジャーでは38%、ディレクターで33%、シニアバイスプレジデント(SVP)では28%、Cレベルの最高経営幹部になると21%に留まる。データを深く掘り下げていくと、女性の割合が低下するのは採用時や定着率に男女差があるからではなく、昇進時の男女差が主な原因であることが明らかになる。

 どこかで聞いたことがある話だと思うのではないか。これは実際、どこにでもある話だ。

 これらの数字は、マッキンゼー・アンド・カンパニーとリーンイン・ドット・オーグが毎年発表している報告書「ウィメン・イン・ザ・ワークプレイス」の最新版から筆者らが拝借し、北米企業317社における男女比の平均を反映している。この報告書は、多くの企業が自社のジェンダー平等を推進するためには、採用時ではなく昇進時に焦点を絞った取り組みが求められる事実を強調するものだ。

 いわゆるパイプライン(社内の人材)を多様化する努力は依然として重要であり、特にテック業界や金融業界では欠かせない。しかし一方で、採用した女性を育成し昇進させることができなければ、シニアレベルのジェンダー平等、あるいはそれに近い状態を実現することは非常に困難になるだろう。

 筆者らはこの問題を解決するために、シンプルかつ簡潔なコンセプトを見出した。それは「ジェンダー比例原則」(GPP)である。重要なのは、この原則が達成可能であるうえに、筆者らの経験では多くの場合、組織の幅広い階層で支持されることだ。

 ジェンダー比例原則とは、組織のある階層のジェンダー割合をすぐ下の階層のジェンダー割合と同じにすることを目指すものだ。一般に、下位階層では女性の割合が高い。ジェンダー比例原則を適用すれば、いずれ上位階層でも女性が増えていくはずである。

 下図を例に考えてみたい。ある組織における女性の割合が、マネジャーでは38%、エントリーレベルでは50%の場合、達成には努力を要するが納得できる期間を設けて、女性マネジャーの割合を50%に引き上げることを目標にすべきである。同様に女性ディレクターの割合は、その下の階層であるマネジャーの現在の割合と同じ38%を実現目標にする。このようにジェンダー比例原則に従うことで、いずれ組織のあらゆる階層でジェンダー多様性が増していくはずだ。