プロアクティブリカバリーがもたらす恩恵は、休暇に限定されない。筆者らは別の調査で、労働者243人に対して、週末の過ごし方にゴールを設定するかどうかを尋ねた。ここでもまた、週末のゴールを設定した人は、そうしなかった人よりも幸福度が13%高かった。休暇の場合と同様、週末のゴールがある人たちも、週末のより多くの時間を社会活動に費やし、休息や何もしないで過ごす時間が少なかった。そして社会活動を行なって週末を過ごす結果として、幸福度がいっそう増すのである。
ゴールを設定することで生じるポジティブな効果は、週末や休暇だけでなく、実は日々の過ごし方にも利用できる。就業時間後の夜の時間をどう過ごすかにゴールを設けると、恩恵がもたらされるのだ。242人の労働者を対象とした別の調査では、平日の夜の過ごし方にゴールを設定した人たちは、そうしなかった人たちよりも社会活動に長時間費やしており、幸福感が10%高かった。
ただし注意点が1つある。仕事をしていない時のゴールを設定するのは重要だが、それはゴールを「やることリスト」のように扱うべきだという意味ではない。柔軟性は必須である。
ラトガース・ビジネス・スクール助教授のガブリエラ・トニエトとオハイオ州立大学フィッシャー・カレッジ・オブ・ビジネス准教授のセリン・マルコックによる研究では、レジャー活動のスケジュールをみっちり立てると楽しさが低減する可能性を示している。その理由の一つは、レジャーも仕事のように感じるようになるからだ。レジャー活動を大雑把に計画した場合は楽しさを維持できることを、この研究は発見した。
筆者らの研究からも、仕事をしていない時のゴールを設定することが好ましい効果をもたらす理由は、時間の使い方をより強く意識するためであることが示唆される。仕事以外の「やることリスト」の項目をチェックできるからではないのだ。
コロナ禍の終わりが見えず、経済への影響が予想できない難局に直面し、多くの従業員が休暇の計画を立てるべきかどうかを迷っているだろう。予約した飛行機が欠航になるかもしれないし、体調を崩すかもしれない。疲れすぎて何もする気が起きないかもしれない。
直観に逆らうと感じるかもしれないが、パジャマでゴロゴロして何もしない時間を過ごすのが何よりの楽しみだと思える時でも、ゴールを設定することで、実際には活力を回復し、休みの時間を最大限に活用できることを、筆者らの研究は示している。
"Be Intentional About How You Spend Your Time Off," HBR.org, December 1, 2021.