デジタルトランスフォーメーションの課題に直面している企業にとって、3つの教訓がある。

 1つ目は、これまで業界の市場支配力を決定付けてきた希少資源に目を向け、デジタルトランスフォーメーションによって大量化できる可能性があるかを考えることだ。

 ホテル業界がそうであったように、デジタルがもたらす豊富さが自社のブランド価値を低下させるだろうか。ニュース業界がそうであったように、情報の生産と発信に対する自社のコントロールが弱体化するだろうか。あるいは百科事典、携帯電話、タクシー、自動車業界で起きたように、プロダクトの性質すら変えてしまう可能性があるだろうか。

 2つ目は、デジタルトランスフォーメーションによって、組織がコントロールできない新たな希少資源が生み出されているかどうかを評価し、そのような新たな競争優位の源泉にアクセスするには、いかなる組織的・文化的変革が必要かを考えることである。

 3つ目は、デジタルトランスフォーメーションによって既存のビジネスモデルが変化することを嘆くのではなく、自社の根底をなすミッションを見つめ直し、それをよりよく遂行するために新しいデジタル技術を利用できるかどうか、またどのように利用できるかを検討することだ。

 これらの教訓はいずれも重要だが、肝心なのは3つ目である。デジタルトランスフォーメーションを主に脅威としてとらえるのは自然なことだ。その機会を見極めるにはリーダーシップが必要であり、実際にエンタテインメント業界のリーダーはそうやって対応した。

 デジタルトランスフォーメーションに対するミッション主導の対応がハリウッドで成功したのであれば、自社の場合にはどうすればうまくいくのか、ぜひ考えてみてほしい。


"Lessons from Hollywood's Digital Transformation," HBR.org, December 16, 2021.