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新しい仕事に就く時は、誰しも期待と不安を抱くものだ。「次の職場に早く慣れて、仕事を成功させたい」と、未来の自分に意識が向かうのは自然なことだが、「いまの会社をどのように去るか」を忘れてはならない。転職とは単に職場を離れることではない。自分の遺産を確固たるものにしたうえで、リーダーとしてチームが今後も成功するように環境を整え、自分自身の人間関係やネットワークを強化する機会でもある。本稿では、キャリアの転換を目指すリーダーにコーチングを行ってきた筆者らの経験から、「退職のマネジメント」として実践すべき8つのステップを紹介する。


 あなたは職場でリーダーを務めているが、最近になって他社への転職を決めたばかりだ。頭の中にはきっと、たくさんのことが渦巻いているはずだ。

 次の職場でうまく滑り出すことばかり考えていたとしても、何ら不思議ではない。長年勤めた職場を離れることが決まり、変化を前に不安を抱いているとすれば、なおさらだ。転職に伴い引っ越しが必要な場合、その手続きにも忙殺され、転職が家族に及ぼす影響も気がかりだろう。

 自分の未来に意識が向かうのは理解できる。しかし、退職の仕方にも十分に注意を払うことが重要だ。

 いまの会社をどう辞めるかは、あなたが率いたチームと会社に大きな影響を及ぼす。あなたがどのように会社を去るかで、同僚や会社からいかなる人物として記憶されるかも変わる。その印象次第では、あなたの評判が高まることもあれば、評判を損なうこともある。

 2人の人物の例を見てみよう。

 デイビッド(仮名)は、消費財メーカーの財務部門で働くエグゼクティブだ。最近、転職活動中の元同僚から推薦状を書いてもらえないかと頼まれた。元同僚は、在職時はスター社員だったが、突然退職を通告し、社内に大混乱を生じさせた人物である。

 その時の経験があるために、デイビッドは推薦状を書くことにためらいを覚えた。そして、最終的に依頼を断ることにした。元同僚を推薦することで、自分の評判が傷つくのを恐れたのだ。

 アナ(仮名)は、あるプロフェッショナルサービスファームのCTO(最高技術責任者)として働いていた。退職が決まってからも、最終出社日まで長時間働き続け、自分の力で重要プロジェクトを完了させようした。そのため後任者との引き継ぎに十分な時間を割けず、チームメンバーと最後にじっくり話をすることもできなかった。

 その結果、あれだけ熱意を注ぎ、自分の「遺産」として会社に残すつもりだったプロジェクトは、打ち切りになってしまった。プロジェクトを継続させる努力を怠っていたことに気づいた時には、もう手遅れだった。プロジェクトの完遂ばかりを意識して、チームのことをないがしろにしていたのだ。

 あなたは、このような落とし穴にはまらないようにしよう。みずからの退職をマネジメントすることは、自分の遺産をしっかりと残すうえで欠かせない。

 筆者らは20年以上にわたり、キャリアの転換を目指すリーダーにコーチングを行ってきた。その経験に基づき、職場に退職を通告した後、以下のステップを実践することをお勧めしたい。