「仕事の柔軟性」を高めることは
なぜ難しいのか

 出世競争が苛烈な、プレッシャーの大きい高給取りの仕事や、収入に大きな差がある企業・部門では、長時間労働で柔軟性に欠ける働き方が当たり前となっていることが多い。米国で男女間の賃金格差がある理由は、この種の仕事が大きく関係している。

 数々の受賞歴を持つ経済史家であり、労働経済学者でもあるクラウディア・ゴールディンは、近著のCareer and Family(キャリアと家族[注])において、その理由は「強欲な仕事」にあると説明する。この概念は、所得の不平等から男女がどのような仕事を選ぶ傾向があるかまで、あらゆることに関係している。

 新型コロナウイルス感染症の流行により、2020年以降、何百万人もの人々が仕事と家族のケアの両立を迫られ、多くの雇用主が家庭の事情に配慮するようになった。こうした仕事がどれほど柔軟になっているのか(あるいは、いないのか)、この柔軟性が男女の不平等や賃金格差に影響を及ぼす可能性があるのか、そして、仕事をより強欲でないものにする方法があるのかどうか、私はゴールディンの見解を聞いてみたいと考えた。