●いまあるオフィスで試行錯誤する

 パンデミック後に、新しい社屋を建てる企業もあるかもしれない。だが、大半の企業にできるのは、オフィス環境をより思慮深く設計することだ。自社で新しいアイデアを試す時は、小さなことから始めるのをお勧めする。たとえば、会議室の用途を変える、チーム作業用のテーブルを新たに購入する、ビル全体ではなく1つのフロアだけを改装する、などだ。

 マルチメディア技術を取り入れることで人々を結び付け、オフィスに新風を吹き込むこともできるだろう。ワーナーメディアの新本社ビルは、同社の広範なネットワークで展開されるコンテンツをオフィスに組み込み、没入型のメディア体験を提供することで、ブランドの一体感やコミュニティ感覚を生み出している。多くの企業が、ハイブリッド会議に関するスマートテクノロジーにも投資している。

 オフィスを多目的に活用することにも目を向けたい。たとえば、ハナ銀行の本社ビルには、1階から最上階まで屋内と屋外にまたがる傾斜路が設けられ、ここを歩きながら1対1のミーティングをしたり、個人がエクササイズしたり、自然や新鮮な空気の中でのひと時の交流を楽しんだりできる。

 さらに、ヘルシービルディング(健康に配慮した建物設計)のガイドラインに従い、安全と持続可能性を重視すべきである。

 ●従業員が新たな洞察を得られるようなパートナーシップを活性化する

 若手のナレッジワーカーにとって、オフィスは締め切りに向けて仕事をする場であると同時に、学習と交流の場でもある。ミレニアル世代の約60%は、職探しをする時に新たな洞察を得る機会があるかどうかを特に重視し、社会問題の解決に関わる機会がある企業であれば、より長く留まるとしている。賢い企業はそのようなプログラムを提供する外部団体と提携し、これを実現している。

 手始めとして、ヨガや瞑想、地域社会への奉仕活動、生涯教育などに取り組むのもよい。たとえば、地域の芸術家や学生の作品を展示する、ロビーで缶詰の寄付などのフードドライブを行う、屋外で期間限定のキッチンカーを運営するといった小さな活動でも、従業員の目的意識を高めることができるだろう。

 オハイオ州コロンバスに大規模なクリエイティブオフィスビルと居住空間を備えた複合用途施設のグラヴィティは、好奇心を養い、コミュニティを築くためのパートナーとプログラムを探せるように、フルタイムで勤務するアメニティ専門のキュレーターを置いている。

 ●最後に

 パンデミックの間に加速したオフィスのトレンドや、より明確化された従業員の選好が、消え去ることはないだろう。企業にはぜひ、この機をとらえて、オフィス環境をどうすれば改善できるかを考えてもらいたい。

 従業員のエンゲージメントとウェルビーイングを高めるようなオフィスであれば、結果的に従業員は出社したいと思うようになり、定着率が上がり、新たに才能あふれる人材も惹きつけることができるだろう。いまこそ、行動に移す時だ。


"Design an Office that People Want to Come Back to," HBR.org, January 24, 2022.