●スペースの目的を考え、ふさわしい名称をつける
単純だと思われるかもしれないが、名前をつけることは重要だ。ナレッジワーカーにとって、オフィスは単に「やることリスト」をこなす場所ではない。コラボレーションや学習を促進し、創造性を発揮する場だ。従業員はそこで成長を実感し、帰属意識を抱くのである。
ビルやフロア、エリアや部屋の名称には、そのような意図を反映すべきだ。「学習センター」「イノベーションスペース」といった名称は、新たな視点の重要性を表現し、デザインの変更を促し、才能を惹きつけ、従業員の行動に影響を与える。
ハナ銀行は新しい本社ビルを「マインドマーク」と呼ぶことで、そこが創造的に働く場であることを明確にした。同様に、フェイスブックやグーグルのような最先端のテクノロジー企業に「キャンパス」があるのは、技術者たちに学生時代のように実験を試みてほしいからである。
UPS(ユナイテッド・パーセル・サービス)が最近、本社ビルの名称を「プラザ」から「ケイシーホール」に改めたのも、CEOのキャロル・トメが『ハーバード・ビジネス・レビュー』で語ったように、温かく魅力的で、コラボレーションの生まれる環境であることを強調するためだった。
●従業員が求めるもの、必要とするものに耳を傾ける
コロナ禍は、優秀な従業員が職場に何を求めているのか、耳を傾けるきっかけになったといえるだろう。
もちろん、すべてのアイデアを実行できるわけではない。だが、ほとんどの企業には、以前の状態に戻すという選択肢もない。従業員はフレキシビリティの拡大、テクノロジーの向上、オフィスに戻るインセンティブを期待しているため、企業はそれらの要望に耳を傾けなければならない。
たとえば、セールスフォース・ドットコムはデスクスペースを40%削減し、個人作業と共同作業をバランスよく行えるように、チーム重視のスペースを特徴とするフロアプランを採用した。
ハナ銀行本社ビルは、デスクで没頭する個人作業、デスクから少し離れたい時に自由に使える座席、チームで集中的にやり取りできるコラボレーションスペース、交流のためのラウンジなど、仕事中のさまざまなモードに対応できる設計になっている。このような体験の組み合わせを通じて、従業員の主体性を体系的に高めることができる。