経営危機を招いた原因は
世界有数の技術力を価値転換できなかったこと

編集部(以下色文字):日本電気(NEC)はかつて、世界トップクラスの事業を複数展開していましたが、2000年頃を境に売上高と営業利益がともに減少し、会社存続の危機を迎えました。その後、森田さんを含む経営陣が中心となって再建に挑み、2019年度から2期連続で最高益を更新するなど、変革は着実に成果を上げています。まず、NECの長期にわたる低迷を招いた原因について、森田さんの考えをお聞かせください。

森田(以下略):現象面として、ITバブルの崩壊、リーマンショック、東日本大震災、あるいは防衛庁に対する過大請求問題などが打撃を与えたことは事実です。しかし、より根本的な原因は、ITが自社でコントロールできるレベルを超えて急成長を遂げたにもかかわらず、組織としてどこの領域で勝負すべきかを決められないまま事業を展開し、事業部門ごとに自己目標の達成を追求したことにあると考えています。

 NECの中興の祖である小林宏治は、「C&C」(Computers & Communications)というコンセプトを1977年に打ち出しました。文字通り、コンピュータ技術と通信技術が融合した社会を目指し、NECがその世界観の実現をリードするというメッセージを打ち出したのです。実際、1990年代には、コンピュータと通信、そして両者をつなぐ半導体という3つの領域で、NECは世界トップ5の地位を獲得することができました。