既存企業は本当に
危機に直面しているのか
今日のビジネス界では、かつてない急速な変化と創造的破壊が起きているというのが定説である。この説によると、ビッグテックが君臨しつつあり、ユニコーン(時価総額が10億ドル以上のスタートアップ企業)の成長が続く一方で、既存企業がS&P500の地位を維持する平均期間は急速に短縮し、その地位に留まる価値がこれまでになく高まっているという。
つまり、既存企業には遅れを取り戻すか、さもなければ死かという暗澹たるメッセージが突き付けられている。
だがここで、もっと大きな視点から現状をとらえ直してみよう。たしかに、大手テック企業の指数関数的な成長ぶりや、ディスラプション(破壊的変化)の有名な犠牲者(ノキア、コダック、ブロックバスターなど)を取り上げて、警鐘を鳴らすこの説に、異論を挟む余地はない。とはいえ主要な経済セクターの中には、ここ30年でそれほど大きな混乱が生じていないところも多い。つまり、テクノロジーの力で効率的かつ安価に顧客へサービスを提供するライバル企業に、既存企業は取って代わられていないのだ。