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リーダーが部下にフィードバックを行うことは不可欠だ。ただし、共感力の高いリーダーがネガティブフィードバックを行った場合、直後にリーダー自身の業務遂行能力が損なわれてしまう。ストレスが高く、エネルギーを奪われるからだ。一方で、共感力の低いリーダーは相手の立場で考えることができないので、有益なネガティブフィードバックを行うのが難しい。本稿では、ネガティブフィードバックがリーダーに及ぼす影響を認識し、共感力の高いリーダーと低いリーダーそれぞれに対して、組織が講じるべき支援策を論じる。


 ネガティブフィードバックを行うことは、リーダーシップの有効性を高めるうえで極めて重要な要素である。しかし、建設的な批判を受け取ることの恩恵が明白である一方、そのような指摘をすることがリーダー自身にいかなる影響を及ぼすかは明らかにされていない。

 リーダーの中には、ネガティブフィードバックの提供を楽しいと思える人もいる。しかし、ある調査によれば、マネジャーの44%がネガティブフィードバックをすることが難しいと思ったり、ストレスを感じたりしているという。

 その問題は、当人が若干の不快感を覚えることだけではない。著者らは、さまざまな業界のリーダー500人近くを対象に調査を実施し、ネガティブフィードバックを行うことの知られざる影響について研究した。そして一連の調査研究の結果、ネガティブフィードバックを行った直後に、リーダーシップの有効性が著しく低下する人がいることが明らかになった。

 なぜ、そのような現象が起こるのか。著者らの研究から、その理由をひも解く重要な要素として「共感」が挙げられる。

 さまざまな局面において、共感力はリーダーシップを発揮するために不可欠なスキルだ。共感力の高いリーダーの場合、ネガティブフィードバックを行うとリーダーシップの有効性が低下するのに対し、共感力の低いリーダーの場合、その有効性が高まることが判明したのだ。

 興味深いことに先行研究では、共感力が高いリーダーはネガティブなフィードバックを上手に伝えられることが示されている。相手がどのように感じ、どのように考えるかを事前に予測する能力が高く、嘘偽りのない心配りと思いやりを表すことに長けているため、建設的な方法でフィードバックを伝えることができるのだ。

 ところが、筆者らの研究結果が示すように、受け手にとって極めて有益なフィードバックを与えられるリーダーは、フィードバックを行った後、自分自身のリーダーシップの有効性が低下する可能性が高いのだ。