Pepino de Mar studio/Stocksy

社会学者のエミール・デュルケームは、社会規範が失われた状態を「アノミー」と呼んだ。ある規則に従って活動するウイルス、別の規則に従い行動する政治家、そして、どちらとも無関係に進む職業生活……私たちはいま、アノミーの時代を迎えている。社会的に孤立し、無規範、抑うつ、不安に悩まされる時代を乗り越えるには、共感が不可欠だと筆者はいう。本稿では、アノミーから脱却し、新たな「ニューノーマル」の形成するために、共感を実践するための4つの方法を論じる。


 2021年8月、筆者の勤務先であるマサチューセッツ工科大学(MIT)は、講義などの指導は例外なく、新型コロナウイルス・ワクチンの接種と定期検査を行ったうえで、対面で実施すると発表した。

 当時の状況からして、筆者はこの規定に不安を覚えた。検査結果は翌日まで出ないにもかかわらず、検査を受けたらすぐ、教壇に立つ許可が下りた。そのプロトコルは、個人を保護するためではなく、市中感染を防止するためのものだった。