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職場で女性の数を増やしさえすれば、ジェンダーバイアスは自然と解消されると思われがちだが、それほど単純な話ではない。筆者らが調査した結果、法曹界や高等教育分野のように男性より女性の労働者が多い分野でも、女性は偏見や差別を経験していることが判明した。本稿では、男女平等を推進し、ジェンダーバイアスを解消するために、リーダーが実施すべき5つの取り組みを紹介する。


 ジェンダーバランスを実現すれば、バイアスが減り、ジェンダーギャップが縮まる。ビジネスの世界では、そのように考えられてきた。いわゆる「女性を加えてかき混ぜる」アプローチで、女性の数を増やしさえすれば変化が起きると思われがちだ。

 しかし、職場の女性を増やすだけで、男性が女性より恩恵を受ける組織の構造や制度が変わることはない。筆者らの新しい研究(『パーソネル・レビュー』誌に近く掲載)から、ジェンダーバランスが取れている分野や女性優位の分野でも、ジェンダーバイアスが依然として蔓延していることが明らかになった。

 ジェンダーバイアスに関する研究の多くは、STEM(科学、技術、工学、数学)や法執行機関など、男性優位で、女性が経験する偏見や差別が顕著にあらわれやすい分野に注目してきた。

 それに対して筆者らの研究は、男性より女性の労働者が多い4つの分野──法曹、高等教育、信仰に基づく非営利団体、ヘルスケア──におけるジェンダーバイアスを検証している。これら4つの分野では、明らかに女性が多い。法曹界は53.5%高等教育は55.3%信仰に基づく非営利団体は63.8%ヘルスケア業界は77.6%を女性が占める。

 筆者らは「女性リーダーのためのジェンダーバイアス・スケール」と自由回答形式の質問を用いて、4つの分野で働く女性リーダー1606人を対象に、ジェンダーバイアスに関する認識と経験を、微妙なもの(例:貢献や業績を認められにくい)から、あからさまなもの(例:職場でのハラスメント)まで、15の要素で比較検討した。

 これらの分野は女性が多数派であるにもかかわらず、女性はいまでもさまざまなバイアスを経験していた。コミュニケーションの制約はその一例で、女性は権威を示す時にことさら気をつけなければならず、自分の業績を小さく見せるような態度を求められる。また、貢献を認めてもらえない、男性に発言をじゃまされるといった報告もあった。

 女性の割合が十分に多い職場でも、意思決定は基本的に男性が行うといった「ボーイズクラブ」のメンタリティが維持されていた。調査に回答した女性リーダーは「ガラスの崖」に立たされて、自分にはコントロールできない問題の責任を負わされることもあった。

 また、彼女たちにはメンターやスポンサーがいないことも珍しくない。そして、個人的な義務を果たすために、自分の野心を律しなければならない人もいた。言い換えれば、仕事と家庭の両立に職場が協力的ではないのだ。これらの障壁のほかにも、ジェンダーバイアスの他の側面について、業界によって顕著な違いが見られることもわかった。