権力にまつわる2つの罠
ブラジル・リオデジャネイロのラゴア病院は患者でごった返し、医師のヴェラ・コルデイロは貧しい子どもたちを診療しながら、憤りを募らせていた。
この公立病院でコルデイロが診ている患者は、日々の食事もままならず、非衛生的な環境で生活している。富裕層のための私立病院なら簡単に治せる病気でも、目の前の患者にとっては容易に命取りになる。
そこで1991年、彼女は非営利の「アソシアソン・サウージ・クリアンサ」(ブラジル・チャイルド・ヘルス)を設立した。その目的は、子どもたちが必要とする医療を提供し、社会的弱者である彼らの家族を支援することで、貧困の悪循環を断ち切ることだった。