
組織の多様性を高めようと、過小評価グループを対象に能力開発研修を実施したり、昇進プログラムを用意したりする企業は少なくない。その根底にあるのは、プロフェッショナルとして成功するために、疎外されてきた従業員自身が行動を変えてほしいという期待だ。その結果、彼らのパフォーマンスには問題があるという間違ったナラティブが生まれる。DEIを目指して、ダイバーシティを高め、インクルージョンを実現しようとしているにもかかわらず、エクイティの観点から「アシミレーション」(融和、同化)を推進してしまうのだ。本稿では、専門能力開発をどのように設計すべきかについて、3つの観点から論じる。
筆者らは最近、あるクライアントから次のような依頼を受けた。彼らが「多様な人材」と呼ぶ従業員を対象に、昇進を加速させるためのプログラムを考案してほしいという話だった。
筆者らが追加調査を実施したところ、この会社が従業員に課していた昇進条件は、多くの従業員が習得に苦労しているスキルであることが明らかになった。社会から疎外されたアイデンティティを持つ従業員にとっても、それ以外の従業員にとっても、昇進条件は同じだった。
選ばれた一部の従業員だけを昇進プログラムの対象にしたことで、それらのスキルを習得するうえで助けが必要なのは、過小評価されたバックグラウンドを持つ従業員だけであり、彼らのパフォーマンスは本質的に問題があるという、間違ったナラティブが生まれていた。さらに、そのようなプログラムは、プロフェッショナリズムに関して単一の基準を設定していることから、真の「インクルージョン」(包摂)とは正反対の「アシミレーション」(融合、同化)の推進につながることが少なくない。
このようなアプローチは、会社があらゆるレベルで変化する必要性を低く評価しているというメッセージを広めかねない。
ある組織がエクイティ(公平性)を実現するために、社会的に最も虐げられてきた集団の行動変容が期待されるのは、珍しいことではない。しかし、自分が属する集団だけが行動変容を期待される組織では、自分たちは安全で、包摂されていると感じることはほとんどないだろう。
あなたの会社でも、プロフェッショナリズムに対する期待を検証し、専門能力開発プログラムを見直して、フィードバックプロセスを調整し、人間関係に焦点を絞ることをお勧めしたい。これらを通じて、フラット化ではなく多様性が称えられるような、インクルーシブな組織文化を構築することができるだろう。