●アジャイルを文化の実装という枠組みで示す

 多くの組織は、アジャイルの実践後ほどなくして、技術的なプロセスとツールを崇拝するような初期位置に戻ってしまう。文化的考察は、抽象的で業務に落とし込みにくいからだ。

 人間的側面については口先だけで賛同し、スクラムやスプリント、カンバンやカイゼンに向かうほうが簡単だ。これらのプロセスは、具体的かつ測定および観察が可能な指標として機能し、成功しているような錯覚をもたらして、アジャイルを大規模に展開しているかのように見せてくれるからだ。

 アジャイル変革を始めるにあたり、まずはアジャイルを技術的もしくは機械的な取り組みではなく、文化の実装という枠組みで提示しよう。その際、文化をワークストリームとして捉えないよう注意すべきだ。ワークストリームとは、プロジェクトを完遂するために、必要なタスク群を順次完了していくことである。

 アジャイルの文脈の中で文化をワークストリームとして捉えると、それは「完了できるもの」に分類されてしまう。文化は完了できない。にもかかわらず、あたかも始まりと中間と終わりがある作業分解図の一部かのように、文化をプロジェクト管理しようと試みるアジャイルチームが見られる。文化はそのようなものではない。

 チームの文化は、恐れに根差した規範へとすぐに戻ってしまう危険が常にあることを忘れてはならない。したがって、個人と対話を最重視しよう。敬意の欠如、無礼、無関心を少しでもうかがわせる行動は、チームを閉鎖的でパーソナル・リスクマネジメントに徹する状態に戻す可能性がある。

 チームが詳細な行動要件を規定・管理できれば、それらは即座に、個々人がアカウンタビリティ(結果に対する説明責任)を果たすことで守られる規範となる。たとえば、「他者の思考を遮らず、最後まで考えさせる」などだ。

 ●脆弱な行動と反応の組み合わせを考案し、文書化して掲示する

 成功するうえで不可欠と思われる脆弱な行動を明らかにするために、チームが正式な場で議論しよう。メンバーはおそらく、一般的な行動から挙げていくだろう。質問をする、フィードバックを提供する、異なる意見を表明するなどだ。ニュアンスが異なるものも含め、より長いリストができるまで続けよう。

 その後、各行動に対するポジティブな反応のパターンを特定する。間違いを指摘することが脆弱な行動であれば、それに対するポジティブな反応は、「ご指摘ありがとうございます。根本原因は何だと思いますか」と応じることかもしれない。

 行動と反応の組み合わせを文書化し、それを会議室に掲示しよう。バーチャルでチーム会議をする場合は、チャットに投稿する。リストは随時更新するものとして、スプリントの振り返り(レトロスペクティブ)で見直しをしよう。リストを持ち運び可能な業務支援資料として印刷し、バーチャル会議でのリマインドや指針となるようにデジタル版も提供するとよい。

 ●各スクラムで一つの行動に焦点を当て、文化面の説明責任を果たす

 脆弱な行動と反応の組み合わせリストを共同で作成したら、今度は一つを選んで各スプリントで実践しよう。チームで特定の行動・反応のパターンに焦点を当てれば、実践可能な範囲に収まり、文化面での説明責任を果たすことが促進される。

 脆弱な行動・反応の組み合わせと、チームリーダー自身が示す行動に乖離が生じると、その不一致はシニシズム(冷笑主義)を生み、信頼を低下させる。一方、リーダーが行動の模範を示すために努力し、その過程で間違いを公に認めれば、チームは累積的に進歩する。

 脆弱な行動の実践と、その行動に報いることに関して、チームメンバーが互いに責任を負い合う必要があることをリーダーは明示しなければならない。