●スプリントの振り返りで、正式に対話的プロセスを検証する
スプリントの振り返り――各スプリントの終了時に、良かった点と改善すべき点を振り返るために行うミーティング――の中で、チームの対話的プロセスを正式に検証する時間を設ける。この検証を標準的な議題にしよう。
チームにおける対話の質について話し合い、開放性に対する潜在的脅威を明らかにする。次のような質問をするといい。
あなたはスプリントの過程で、包摂されていると感じましたか。そう感じた理由、または感じなかった理由は何ですか。このスプリントの中で実践した、最も脆弱な行動は何ですか。チームはそれにどう反応しましたか。安全ではないと感じたために、控えた発言や行動はありますか。チームは参加と影響力に関して民主的な傾向を示していますか。その理由は何ですか。
●スクラムを「問いかけと内省」で締めくくる
スクラム会議は、チームメンバーがバックログを振り返り、障害を明らかにし、タスクに優先順位をつけるために毎日行う、スピーディな調整ミーティングだ。手短に済ませるために、立ったまま行うことが多い。ブレインストーミングは目的ではないが、次の会議までの合間に内省の時間を設けるために、必要に応じてこの場を利用するとよい。
たとえば、チームが難しい障害に直面していたら、問題について問いを投げかけ、次のスクラム会議で話し合うために準備をしてくるようチームに求める。このやり方は、メンバーに考えを固めるための時間をより多く提供し、発散的思考を促すことになる。本能的直感と、データに基づく選択肢のどちらも歓迎するとチームに伝え、安心させるとよい。
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アジャイル化に必要とされる脆弱な行動が罰せられる旧態依然とした文化に、アジャイルのツールとプロセスを投入すれば、失敗が待っている。脆弱性が罰せられる環境、すなわち心理的安全性が低い環境では、アジャイルとは名ばかりの組織になり、有能だが行き詰まって失敗したチームと同じ道をたどることになる。
チームがアジャイル変革に苦労していたら、ひそかに観察し、チームの対話的プロセスを検証してみよう。メンバーは互いを尊重しているだろうか。率直さを容認しているだろうか。脆弱な行動を擁護し、報いているだろうか。
その答えがノーであり、メンバーが神経質で気難しかったり、排他的であったりしたら、リーダーにはやるべきことがある。リソースと専門知識に恵まれ、技術的なプロセスとツールに精通していても、アジャイルの実現は最終的に、心理的安全性という最大の成功要因にかかっているのだ。
"Agile Doesn't Work Without Psychological Safety," HBR.org, February 21, 2022.