
多様なバックグラウンドを持つメンバーで構成されるチームは、さまざまな視点やアイデア、意見が共有されるため、同質性の高い集団よりも優れたパフォーマンスを上げる。このような主張をよく耳にするが、実際には、チームの多様性の高さは負の影響をもたらしかねない。その原因は、心理的安全性が担保されていないことにある。本稿では、心理的安全性を高めて、チームの多様性をパフォーマンスの向上につなげるために3つの方法を紹介する。
筆者らは経営幹部らにティーチングを行う際によく「多様性はチームのパフォーマンスにどう影響するか」と尋ねる。すると大多数の人々は、多様性のあるチームはそうでないチームよりも優れた結果を出す──イノベーションが必要なプロジェクトでは特にそうだ──と確信している。
彼らの主張は、お馴染みの内容だ。競争の激しい環境で画期的な成果を上げるためには、多様性のあるチームのさまざまな視点やアイデア、意見が不可欠だ、という主張だ。
ところが実際には、多様性のあるチームは往々にして、同質性の高いチームよりもパフォーマンスが低い。なぜか。多様なチームにポテンシャルがあるのは明白な事実だが、それを阻むコミュニケーション上の課題に直面するからだ。
単純なことだ。似たようなバックグラウンドを持つ人々は、振る舞い方や優先順位の付け方、仕事の進め方について、規範と前提を共有している。一方、異なるバックグラウンドを持つメンバーから構成されるチームでは、このような当たり前の習慣が衝突しやすく、ある意見を裏付ける「根拠」でさえ異なる。
その結果、誤解やフラストレーションが生じる。実際、過去の研究から、人口統計学上の多様性は、平均するとチームの成果にマイナスの影響を与えることが示唆されている。
筆者らは、イノベーションが重視される医薬品開発のチームを対象に調査を実施した。そこから、チームの「心理的安全性」──アイデアや質問、懸念について発言しても拒絶されたり、恥をかかされたりしないという信念が、チームメンバーの間で共有されていること──が、多様性のメリットを引き出すカギになることが明らかになった。