女性の採用や昇進を阻むものは何か
職場でジェンダー平等が大幅に改善されてきたことは確かだ。しかし、女性の従業員や求職者を阻むような、影響力の大きな(時に極めて微妙な)障壁が広範に存在することが、研究で明らかにされ続けている。特に最近の複数の研究では、採用や能力開発において、ジェンダー不平等を助長するさまざまな要因を検証している。
●育児休暇取得が法令で義務化されていると、企業の女性に対する投資が少ない
職場における女性支援を目的とした政策が、時として裏目に出ることを検証した興味深い研究がある。19カ国の1万3000人を対象に分析した結果、有給の育児休暇やチャイルドケアを幅広く提供することが義務付けられている地域では、事業者が女性従業員の育成に投資する額が少ないことがわかった。
●女性らしい言葉遣いをしない女性候補者は採用されにくい
別の研究では、男性が支配的な分野の仕事に女性が応募する際は、女性らしさを抑えようとするかもしれないが、履歴書や職務経歴書に添付するカバーレターで女性らしい言葉をそれほど使わない女性候補者は、採用される可能性が低いことが明らかになっている。
女性らしさを抑えようとすると、採用マネジャーの(潜在的に持っている可能性のある)ジェンダーステレオタイプと対立し、その候補者に対する評価がポジティブなものでなくなることが理由だと、研究者らは指摘している。
●キャリアに関する交渉の多くにジェンダー格差が存在する
給与交渉に対する従業員の意欲に男女間で差があることは、すでに裏付けられている。最近の分析では、他の側面に関する交渉も同じように、キャリア形成に大きな影響を与える可能性があることがわかっている。
具体的には、男性従業員と女性従業員のキャリアに関する交渉について、450件以上の記述を検証したところ、仕事量、ワークライフバランス、役割の定義などをめぐる交渉の重要性が明らかになったという。
研究者らは、女性は昇給を要求することに抵抗を感じやすいかもしれないが、長期的なキャリアの展望を開くうえでは、昇給以外の交渉が有益である可能性を示唆している。