「集合的野心」とは何か

 景気後退(リセッション)の大打撃により、多くの企業が深刻なダメージを被った。しかし、これまで以上に力をつけた企業もある。たとえばホスピタリティや美容といった贅沢品業界のように、どこよりも大きな痛手を被るであろうと思われていた業界にも勝者は現れた。

 この業界を含め、他のさまざまな業界でも、一握りの企業がこの乱気流を乗り切り、新たな目的意識を見出した。これらの企業は、いかにして例外的存在になったのだろうか。

 フォーシーズンズホテルアンドリゾートを例に挙げよう。世界経済が景気後退に入りつつあった2008年、フォーシーズンズはすでに厳しい過渡期を迎えていた。みんなから敬愛されている創業者兼会長のイサドア・シャープは第一線から退き、どちらかと言うと顧問的な立場となる予定であった。そして、フォーシーズンズで最初のCEOには、COOのキャスリーン・テイラーが就任することになっていた。