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インクルーシブリーダーとして、メンバー全員を公平に扱おうと心がけるのは重要だ。しかし、実際には正反対の行動を取っていることがあまりに多い。多様性の価値を頭では理解していても、自分とは異なるタイプの従業員から距離を置こうとする社会的・心理的メカニズムが働くからだ。筆者らは「マントラ」の活用を提唱する。本稿では、自分の意図に沿った行動を起こすために、心の中でマントラを唱えることがなぜ有効かを論じたうえで、自分のマントラを考案するための具体的なステップと実践例を紹介する。


 チームの結束力は、組織の成功、イノベーション、そして帰属意識を醸成するために不可欠だ。現代のリーダーがいまなお直面している最大の課題の一つは、メンバー全員が公平に扱われ、同じように大切にされていると感じられるインクルーシブ(包摂的)な文化を構築することだ。

 筆者らは、多様なチームをリードすることに関して、数多くの経営幹部と学生に教えてきた。その結果、ほとんどのリーダーが、自分ではインクルーシブな行動をしていると思っていても、気づかぬうちに正反対の行動を取っていることがあまりに多いことがわかった。

 たとえば、ロブ(仮名)は急成長中の大手テック企業で、過小評価グループのアライになりたいという熱意を持っていた。しかし、彼が望んだ通りの結果にはならなかった。彼の組織では、男性のほうが女性や非白人よりも昇進スピードが早いだけでなく、過小評価グループに属する同僚と比べて職場に対する帰属意識も高かった。ロブは、どうすれば自分の熱意と結果のギャップを埋められるのか考えあぐねていた。

 リーダーが真にインクルーシブな行動を取れるようになるには、まずそれを妨げている心理的メカニズムを理解することが欠かせない。それによって初めて、意図した通りのインパクトをもたらす行動を取ることができる。

「マントラ」を駆使することは、そのような方法の一つだ。マントラとは、困難な状況を迎える前に、明確な目標に向けて心身を集中させることを目的として、心の中で繰り返し唱えるフレーズのことを指す。