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イノベーションの投資収益率を改善する
成長の原動力はイノベーションにほかならない。大規模な買収は企業価値をいっきに上昇させるが、それはおよそ成長と呼べる代物ではない。「固まりになった」とでも表現したほうがよかろう。
この種の商行為によって売上げが伸びたとしても、平均以上の成長率を維持できるのは、せいぜい2、3年である。タイコ・インターナショナル、ビベンディ・ユニバーサル、ヘルスサウス、ダイムラー・クライスラーといった例を見ればわかるだろう。
一方、10年以上にわたって健全な成長率を維持している企業の場合、調べてみればわかるが、世界水準のイノベーションを達成していることが多い。
たとえば、コンピュータ業界の垂直統合を水平分業に至らせたマイクロソフトのように、業界構造を一変させた企業もある。また、高級ディスカウント・ストアのコストコのように、大胆なビジネスモデルを他社に先駆けて開発した企業もある。はたまたノキアのように、ピカピカの新商品を次から次へと生み出しているところもある。
要するに、イノベーションは成長のエネルギーであり、これが尽きれば、成長は止まってしまう。当然のことだ。しかし問題はここにある。何しろ、いまは緊縮財政の時代である。予算を作成する際、どこの企業も数字一つひとつが厳しいチェックを受ける。イノベーションのための予算も例外ではない。
昨今、R&D部門はその予算を獲得するために、各事業部門にかけ合わなければならない。しかも、顧客の問題を解決するという現実的な成果を求められる。たとえばIBMのように、R&D担当者が直接顧客と接することができるように、現場に配置している企業もある。
あるいは、経営資源を二、三の最も有望なプロジェクトに集中するために、開発の初期段階から厳しくふるいにかける企業もある。それどころか、R&D担当者がアイデアを得た時点でその商業的価値を判断できるよう、彼らにビジネスマンとしての思考様式を学ばせている企業もある。