
コロナ禍によって働く場所の柔軟性が高まる一方、仕事量が増大したことで従業員がストレスを感じたり、バーンアウトを経験したりしている。これらの問題に対処すべく、リモートワークやハイブリッドワーク、あるいは「つながらない権利」といった取り組みが人気を集める中、週休3日(週4日勤務)制の導入を図る企業も増えている。一見すると、労働時間の短縮によって従業員のウェルビーイングを高めることができそうだが、過剰な仕事量と激務の問題に取り組まない限り、根本的な解決にはつながらないと筆者らは指摘する。本稿では、週休3日制を導入しようとする前に、リーダーが心得ておくべき2つの注意点を論じる。
新型コロナウイルス感染症のパンデミックによって、働く場所の柔軟性が高まる一方、仕事量が増大したことで、労働者が十分な休息を取り、回復するための余裕がほとんどなくなっている。
その影響は明らかだ。2020年の調査では、過去3カ月間に「頻繁に」または「非常に頻繁に」バーンアウト(燃え尽き)を経験したと回答した人が62%に上り、2021年の調査になると、「コロナ禍以降、ストレスを感じたり、バーンアウトを経験したりすることが増えた」と回答した労働者は67%に上った。
仕事量の多さや「常時オン」の風潮に対抗する試みとして、週休3日制、リモートワークやハイブリッドワーク、無制限の有給休暇、「つながらない権利」といった取り組みが人気を集めているのは、当然のことなのかもしれない。
しかし、これらの解決策は、本当に労働者のためになる変化をもたらすのか。従業員とマネジャーにとって、さまざまな要求に対処できるようにバランスを再調整する助けになるのか。
英国経済社会研究会議(ESRC)の出資によって設立されたデジタル・フューチャー・アット・ワーク・リサーチ・センター(Digit)で筆者らが行った研究では、これらの質問に対する答えは複雑であり、本質的な問題、つまり過剰な仕事量と激務の問題に取り組まない限り、簡単には答えられないことが示唆されている。
従業員の働き方の方針を策定する側は、「いつ、どこで働くか」という点に注目するあまり、我々が「どのように、どれだけ働いているか」という点を見失っているように見える。
ヘレン・ディレイニー(オークランド大学ビジネススクール上級講師)とキャサリン・ケイシー(英ラフバラー大学スクール・オブ・ビジネス・アンド・エコノミクス教授)による、ニュージーランドでの週休3日制導入に関する研究では、新たな動きに伴い、仕事量が増大しただけでなく、業績評価、監視、生産性に関わるマネジメント側のプレッシャーも増大したという。
実際、メディアでは週休3日制に関する評価の高い研究のいくつかが取り上げられているが、いずれも「管理の仕方次第で、生産性は低下しない。むしろ、向上するはずだ」というのが論拠になっている。