Illustration: Aaron Marin

デジタルサービスの利用者が、サービスを円滑に利用できるようにするアクセシビリティに、ますます高い水準が求められている。これまでは、視覚的要素に関するアクセシビリティの問題解決を中心に開発が行われてきたが、本来は聴覚や身体の動きに問題を抱えるユーザーのアクセシビリティも高める必要がある。高水準のアクセシビリティを実現するには、ソフトウェア開発者に従来とは異なるマインドセットが求められると、筆者は指摘する。すなわち、開発者が新たな機能を生み出す際、単一のツールだけに頼ることがないのと同様、アクセシビリティの課題に取り組む場合にも、複数のインプットを活用する必要がある。本稿では、変化し続ける要求水準に常時対応するための3つの戦略を論じる。

 

 米連邦政府一般調達局(GSA)は最近、「エクイティ・アクション・プラン」を発表し、政府のあらゆるデジタルサービスについて、必要最低限の水準を超えたアクセシビリティに注力することを明記した。連邦政府機関によるこの動きは、企業もこの流れに追随しなければならないことを示唆している。「インクルーシビティ(包括性)を高める」という基本的な変革に留まらず、ユーザーがサービスを円滑に利用できるアクセシビリティの実現に尽力する必要がある。

 とはいえ、必要最低限に留まらない水準のアクセシビリティを実現するには、ソフトウェア開発者に従来とは異なるマインドセットが求められる。

 アクセシビリティの基準調整に携わる人の多くは、少数のツールに依存し過ぎて、視野狭窄に陥っている。React、Vue、Svelte(いずれもユーザーインターフェイス構築のためのJavaScriptのフレームワーク)はどれも、アクセシビリティが考慮されているが、入手しやすいものだけを使用する開発者には、特定のフレームワークに偏り過ぎてしまうリスクがつきまとう。

 多くのツールで視覚的要素に関するアクセシビリティが優先されているのは、それが最も優先順位の高い要素であることが理由だが、では聴覚障害や身体の動きに問題を抱えるユーザーはどうすればよいのだろうか。

 開発者が新機能を生み出す際、単一のツールだけに頼ることがないのと同様、アクセシビリティの課題に取り組む場合にも、複数のインプットを活用する必要がある。開発者によるアクセシビリティのチェック機能が強固なものであればあるほど、多様なニーズを持つ人々への対応力も向上する。

 筆者は10年近くにわたってソフトウェア開発に携わり、この2年間はソフトウェアの設計者と開発者がプロダクトにアクセシビリティを浸透させるためのツールの構築に取り組んできた。開発者はどうすれば、アクセシビリティに関して不十分な水準のツールやガイドラインに頼ってしまう状況を回避できるのか。また、どうすれば変化し続ける要求水準に常時対応できるのか。本稿では、3つの戦略を紹介する。