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マクロ経済の見通しは経営者にとって検討すべき重要課題だ。米国のマクロ経済に対する不安は、インフレから次なる不況へと変わりつつある。すなわち、米連邦準備制度理事会(FRB)の対策は、景気後退のリスクを押し上げた。景気後退はインフレを緩和するという見方はあるものの、そうなる保証はない。筆者らは、2022年に米国で景気後退が始まる可能性は低いと見るが、2023年にソフトランディングできる見込みも不透明だと指摘する。このような状況で、経営者は4つの点にフォーカスすべきと説く。

 

 マクロ経済の見通しは、経営者にとって検討すべき最重要課題であり続けている。2021年、需要が増えすぎてサプライチェーンが停滞した時、多くの企業はかつて経験したことがないほどの価格決定力を持つようになった。

 しかし、その結果生じたインフレに対する米連邦準備制度理事会(FRB)の対策は、景気後退のリスクを押し上げた。現在、マクロ経済に関する不安の種は、インフレから次なる不況へと変わりつつある。景気後退はインフレの火を消すとの見方には説得力があるものの、そうなる保証ははい。

 筆者らが2022年3月にこちらの記事で述べたように、米国の景気を後退させる最大のリスクをもたらすのは、金融政策の立案者たちである。彼らはインフレと闘う中で、成長を押し下げるリスクを冒す。利上げが早すぎたり、行き過ぎたりすると景気後退を招く。ソフトランディングを成功させるのは難しい。

 3月以降、このデリケートなバランスはますます不安定になる一方だ。経済は堅調ながらも減速に向かっており、インフレはおそらくピークに達している。これらの緩和圧力に逆らい、市場に織り込まれたFRBの金利の道筋は積極的な動きを強めている。

 3月中旬の予測では、FRBは2023年2月までに金利を2%近くまで引き上げるとされていたが、現在(本稿の米国公開は2022年6月10日)の予測は3%に近い。FRBが計画を変更するとしても、これらの予測は長期金利を押し上げた。結果的に株式市場、特にハイテク部門が急落し、経済へのさらなる重しとなっている。

 はたして政策の誤りはすでに生じ、景気後退が始まろうとしているのだろうか。2022年にそうなる可能性は低いと筆者らは引き続き見ているが、2023年にソフトランディングできる見込みは弱まっている。その理由を理解するには、インフレの道筋に加えて、利上げが経済に与える影響にも目を向ける必要がある。

インフレはおそらくピークに達している

 コロナ禍におけるインフレは、巨額の景気刺激策が招いた極端な需要と、製品市場、商品市場、労働市場で、同時に起こった供給障害が重なるという、異常な組み合わせで発生した。インフレが大方の予測よりも長く続いた理由は、新たなショックが次々に到来したからだ。

 インフレは当初、パンデミック開始時の低価格に起因する無害な「反発」であった。その後に起きたのは、供給障害、2021年の燃料価格高騰、労働力の熾烈な奪い合い、ウクライナでの予期せぬ戦争、今春の中国での経済閉鎖である。インフレは今後も予測しにくい状態が続くだろう。早期にインフレへの警告を発した人々は、これら一連のショックを予測して警告したわけではなかった。

 ショックはまだ終わっていないものの、最大のストレスは過ぎ去ったように思われる。需要は沈静化している。在庫は健全に回復している。労働者は仕事に復帰している。したがって、インフレは2022年内は緩やかに推移する可能性がある。

 インフレの緩和を示唆するもう一つのシグナルは、企業の価格決定力の低下だ。企業収益は2021年には堅調に伸びたが、これはインフレのミクロ経済的根拠である。企業は明らかに、物価上昇圧力を消費者に転嫁できたからだ。しかし、この状況が続く可能性は次第に低下している。

 企業は通常、値上げと市場シェアを失うこととの間で、トレードオフに直面することを考慮する必要がある。経済が再開する中で、高需要と低供給によってこのトレードオフは猶予された。だが需要が減速し、在庫が回復するにつれ、価格決定力は弱まっていく可能性が高い。最近このダイナミクスが見られたのは、ウォルマートやターゲットのような巨大小売企業が利益率の縮小を明らかにした時だ。

 とはいえインフレの緩和は、インフレの克服とは違う。現実的には、インフレは低下しつつも、2023年全体を通して──そしておそらくその後も──目標インフレ率の2%を上回って推移し、上昇リスクは残るだろう。新たに想定外のショックが生じることはありうる。