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急上昇する離職率への対応を迫られつつも、多くの企業が決定的な解決策を見出せずにいる。だが、「大退職時代」(グレート・レジグネーション)と呼ばれる表面的な現象にばかりに目を向けていると、その根底で起きている大きな変化を見逃してしまうと、筆者らは指摘する。人材の大流出を引き起こしているのは、従業員が「探求の旅」を求めているからであり、コロナ禍によって変化した従業員の仕事に対する考え方を、深く理解する必要があるのだ。本稿では、この「大探求時代」(グレート・エクスプロレーション)にあって、企業はどのように従業員の探求の旅をサポートすべきか、4つのテーマに沿って論じる。

「大探求時代」の到来

「大退職時代」(グレート・レジグネーション)が目下、拡大し続けている。毎月、退職者数は少しずつ増え、米国では2021年1月~2022年2月に計5700万人近くが会社を辞めた。急上昇する離職率への対応に追われる中で、多くの企業がいかに対処すべきか答えを見つけられずにいる。

 どうすれば、この人材の大流出を食い止められるのか。おそらく、よりよいアイデアは、ナラティブを変えることかもしれない。退職という結果にばかりに目を向けるのではなく、その根底で起きているもっとデリケートな変化のプロセス、すなわち「個人の探求の旅」を理解する必要があるのだ。筆者の一人であるマイク・クレメンティは、それぞれの従業員が探求の機会を求める新たな潮流を「大探求時代」(グレート・エクスプロレーション)と名づけた。

 コロナ禍によって、誰もが仕事と人生の優先順位の見直しを迫られた。リモートワークは、仕事と地理を切り離すことができる可能性に気づかせてくれた。そして、売り手優位の労働市場は、それを実現するパワーを与えてくれた。

 それは個人の覚醒であり、私たちはなぜ働くのか、そしてどのように働き、暮らし、未来を考えるかを再形成するために、探究の旅に出ることを促している。

「単に仕事を辞めているというだけではない。バーンアウト(燃え尽き症候群)は成功の代償であるという考え方を拒否しているのだ」と、『ハフィントン・ポスト』の共同創設者として知られ、現在はウェルビーイング分野のテック企業スライブ・グローバルの創業者兼CEOを務めるアリアナ・ハフィントンは語る。

「探求」は「退職」よりも建設的で、自分にパワーを与えてくれるとらえ方だ。退職という現象にばかり注目すると、表面的な症状に対処することはできても、その根本原因に手をつけることはできない。

 リーダーは、従業員の退職に怯えるのではなく、彼らの探求を中心に従来の方針を見直すことで、目の前で起きている現象の深部に流れるポテンシャルを上手に活用できるだろう。従業員の探求の旅を受け入れ、共感し、支援することで、会社と会社にとって最も価値の高いリソース、つまり従業員を仕事でも私生活でも再び花開かせることができるのだ。

 賢明な企業は、大探求時代にどのように対応しているのか。それを理解するために、筆者の一人であるキース・フェラッジは、企業の最高人事責任者(CHRO)を集めてラウンドテーブルを開催した。これは、彼がコロナ禍における新しい働き方のベストプラクティスを調べるために立ち上げたプロジェクト「ゴー・フォワード・トゥ・ワーク」の一環だ。その結果、4つの重要なテーマが明らかになった。