善良な意思決定を促すためには、紙を使うことを検討する
マイナーな問題だと思うかもしれないが、筆者らの調査によれば、顧客や従業員、地域社会の住民が意思決定を下す時にどのような媒体を使うかは、選択に大きな影響を与える可能性がある。これはマーケティング担当者、政策立案者、そして善良な行動を促したい誰にとっても重要な意味を持つ。
たとえば、レストランが顧客により健康的なメニューを選ぶことを促したければ、デジタル端末ではなく、紙のメニューを用意するとよいかもしれない。同様に、親や教育関係者は、生徒が教育的な読み物を選ぶように、紙の注文書を提供するとよいだろう。慈善団体や政治団体が支援や支持を取り付けたければ、ウェブサイトやアプリではなく、紙の誓約書やボランティア登録書を用意するとよいかもしれない。
在宅勤務やハイブリッドワークの導入により、かつては紙面だけで行われていたかもしれない多くの決定が、デジタルプラットフォームに移行してきた。筆者らの実験は、管理された環境における非常に具体的な決定について調べたが、対面交流とオンライン交流の間にも、同様のギャップがみられるかもしれない。
ズームなどのオンラインプラットフォームの投票により下された決定が、対面交流での投票結果ほどリアルで、自分を代弁するものと感じられない場合、バーチャルな職場に重要な影響を及ぼすかもしれない(ただし、現実の職場で従業員が下す決定に多くの要因が影響を与えることは間違いない)。
もちろん紙を使ったからといって、善良な行動が約束されるわけではないし、紙を使うことが合理的ではない場合もあるだろう。紙製品が環境に与える影響を考慮することも重要だ。紙のメニューや用紙を選ぶ場合は再生紙を使うようにし、使用後は人々が再利用しやすくする必要がある。
ECプラットフォームや完全リモートの職場など、紙を使うことが現実的ではないビジネスもある。このような場合、マネジャーは、ある意思決定が現実の世界に与えるインパクトを思い出させるなど、デジタル環境での決定が、よりリアルに感じられる戦略を模索するとよいかもしれない。
ただし、筆者らの研究によれば、紙が選択肢としてある場合に紙を使用すると、その決定は意思決定者にとってよりリアルで、より自分の人間性を示しているように感じさせ、究極的には、より善良な選択をもたらす可能性が高まる効果的な方法であることがわかっている。
"Research: We Make More Virtuous Choices When Using Pen and Paper," HBR.org, August 03, 2022.





