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えこひいきが常に悪影響を及ぼすとは限らない。上司からえこひいきされる従業員がどのように表現するかで、周囲への影響は異なる。すなわち、えこひいきされている従業員がその要因を、みずからの仕事の成果であると認識し、行動する限りにおいては、周囲にプラスの効果となる。一方、えこひいきの要因を、みずからの才能であると認識する場合、えこひいきされた従業員の周囲では有害な嫉妬が蔓延し、組織に悪影響を及ぼすことが明らかになった。本稿では職場の良好な人間関係の構築につながるえこひいきの活用法を提示する。

上司のえこひいきがもたらす前向きな効果

 えこひいきは悪とされがちだが、常に破壊的な行為なのだろうか。もちろん、マネジャーは、お気に入りの従業員に優先して仕事を割り振り、昇進をはじめとする報酬を与えるなど、不公平で周囲のやる気を失わせるような行為は一般に避けるべきだ。しかし、筆者らの新しい研究が示唆するように「自分が気に入っている人を選びたい」あるいは「気に入られたい」という傾向は、正しくマネジメントできれば前向きに活用することもできる。

 そこで、上司がえこひいきをするとチーム内でどのようなことが起きるかを調べるために、中国、米国、英国出身の正社員500人以上を対象に2つの研究を行った。

 研究では調査票と実験データを用いて、上司と同僚の関係が、自分との関係より近いと感じた従業員の反応を、感情と行動の両面から分析した。その結果、上司のえこひいきを目撃した人がネガティブな反応を示し、上司とよりよい関係にあると思う同僚(つまり「上司のお気に入り」)を貶めようとする例がいくつかあった。一方で、上司のお気に入りから学んで自分を高めようとするモチベーションが得られたという回答もあり、ポジティブな反応も見られた。

 こうした違いはどこから生まれるのだろうか。上司のえこひいきのやり方も大きな要因だが、えこひいきをされる人の意思表示、特にプライドの持ち方も、同じくらい重要であることがわかった。

「本物のプライド」を持つ人は、自分の成果を、自分が目標を追求して行った具体的な仕事や努力の結果だと考える。たとえば「私が上司と強い関係で結ばれているのは、私が一生懸命働いたからだ」となる。それに対し、「思い上がったプライド」を持つ人は、自分の成果を自分の資質のおかげだと考える。たとえば「私が上司と強い関係で結ばれているのは、私にはリーダーとの対話に関する才能があるからだ」という具合だ。

 今回の研究から、上司のお気に入りが思い上がったプライドを持っていると思う従業員は、心理学者の言う「有害な嫉妬」を感じやすいことがわかった。そのため、上司のお気に入りを侮辱する、悪い噂を流す、間違った情報や誤解を招きやすい情報を与えるなど、破壊的な行動に走り、仕事の遂行の妨げになる。しかし、上司のお気に入りが本物のプライドを示していると思う人は「無害な嫉妬」を感じ、自分も上司との関係を改善するために同僚から学べることを探したり、直接アドバイスを求めたりするなど、建設的な行動を取ろうとする。

 では、自分や同僚、あるいは部下を、より生産的である無害な嫉妬に向かわせるにはどうすればよいだろうか。