従業員のウェルビーイングについてのデータを把握する

 ウェルビーイングは、科学的妥当性のある方法で計測することによって、業績や成果と関連づけることができる。リーダーが従業員のウェルビーイングの実態を把握していれば、潜在的な危険領域を特定し、ベストプラクティスを発見し、どの取り組みが実際に成果を上げているかを検証することができる。

 従業員へのケアを企業文化の一部として恒常化する

 米国ではパンデミックが始まった当初、従業員エンゲージメントは向上した。経営者は従業員とコミュニケーションを取り、従業員の声に耳を傾け、サポートと柔軟な働き方を提供しようとしたのである。しかし、経営者にウェルビーイングを配慮してもらっていると感じる従業員の比率が急減するにつれ、従業員からは穏やかな感情が損なわれていった。さらにその影響はエンゲージメントの低下、バーンアウトの増加、転職の機会を求める従業員の増加という形で表れたのである。

 対照的に、会社が従業員のウェルビーイングに配慮していると感じているチームでは、顧客エンゲージメントと収益性・生産性が高く、離職率が低い上に、安全に関する事故が少ないことが、ギャラップの調査から明らかになった。

 従業員のケアを企業文化に取り入れている企業は、長期的にウェルビーイングへ注力している。これを実現するためにはCEO自身が起点となって、ウェルビーイングが重要である理由を伝達するとよい。また、マネジャーがウェルビーイングをサポートする能力を身につけていること、ウェルビーイングのコーチのネットワークをつくること、ウェルビーイングに対するマネジャーの取り組みが有用かつ効果的であるかどうかを調査することなども重要である。

 筆者らのデータには、朗報もある。世界の従業員の33%は、自分は仕事の面で成長していると報告している。2020年と比較すると1ポイント増えていて、4年連続で増加している。企業には、職場で働くすべての人たちのケアを行う権限と責任があり、それをまっとうすることが、企業全体としての成功につながる。

 パンデミックから学ぶべき教訓のなかでも、従業員のウェルビーイングが組織の健全性に不可欠であるという学びは上位に据えるべきだろう。従業員が苦悩し苦痛を感じていれば、企業は有効に機能しないし、ましてや適応し、競争し、勝利することはできない。従業員のウェルビーイングは、リーダーがもはや無視することのできないリスクであり、チャンスでもある。


"Stressed, Sad, and Anxious: A Snapshot of the Global Workforce," HBR.org, June 14, 2022.