
意思決定を行う際、多くの人は毎回同じような視点から判断を下しているという。だが、問題に応じて適切な解決策を導くためには、常に同一のアプローチを採用するのではなく、さまざまな視点を取り入れる必要がある。それにはまず、自分の標準的な思考パターンを理解しなければならない。本稿では、筆者の「問題解決者プロファイル」に基づき、意思決定者を5つのタイプに分類した。自分はどのタイプに当てはまるのか、どのようなバイアスに囚われやすいのか、そのバイアスをどうすれば回避できるのか理解することで、意思決定の質を高めることができる。
内省から始める意思決定プロセスの変革
重要だが複雑な意思決定を迫られた時、あなたならどうするだろうか。専門家に相談するか。データを探すか。信頼できる友人や同僚に尋ねるか。自分の直感に頼るだろうか。
私たちの多くが、実際には繰り返し同じ視点から意思決定に臨んでいる。意思決定の対象が大きく異なる場合でも、毎回同じ手段と習慣を用いるのだ。
しかし、すべての問題に対して同じ戦略を踏襲すると、自分の能力を制限してしまうことになる。より優れた意思決定を行うには、それらのパターンから脱却し、たとえ抵抗感があっても物事を異なる視点からとらえなくてはならない。
まずは、自分自身の意思決定における強みと盲点を理解する必要がある。どのような心理で意思決定に臨んでいるのか。 典型的なアプローチは何か。いかなる思考の誤りや認知バイアスにじゃまされる傾向があるのか。
自分が何を重んじるか内省することで、自分がなぜその意思決定方法を用いているのかを明らかにできる。さらに、その方法によって自分自身がどれほどの不利益を被っている可能性があるかも見えてくる。そこから、自分の従来の意思決定プロセスを変革できるのだ。
問題解決者プロファイル
筆者は意思決定に関する研究と仕事を通じて、5つの異なる意思決定の原型を特定し、これを「問題解決者プロファイル」(PSPs: Problem Solver Profiles)と呼んでいる。拙著Problem Solver: Maximizing Your Strengths to Make Better Decisions(未訳)でも述べているが、PSPsは個人の強みと弱みに基づく意思決定のアプローチである。PSPsにはそれぞれ特有の認知バイアスがあり、私たちの判断につながる習慣と行動パターンの起点となる。
自分に当てはまるPSPsがどれか一つに限定されることはない。 自分の傾向をひとたび自覚すれば、よりダイナミックで柔軟な意思決定者になるための対策を講じることができるようになる。
以下は、5つのPSPsの概略である。一読し、どのプロファイルに自分の習慣が当てはまるか考えてみよう(app.areamethod.comでは完全版のPSP診断を受けることができる)。
・冒険家(Adventurer):素早く意思決定を下し、自分の直感を信じる。程度に関係なく困難に直面した時には、貴重な時間をあらゆる選択肢の検討に費やすのではなく、自分が正しいと感じることをする。自分が何者か、何を望むかを自覚しているため、それを獲得しにいくことに不安はない。
・刑事(Detective):情報を重んじ、常に事実とデータを探している。自分の感覚を意思決定の基準にはせず、エビデンスが何を語るのかを見極めたい。詳細を学び吸収すればするほど、成果が上がると信じている。
・傾聴者(Listener):生活の中で、自分が信頼する人、自分を支えてくれる人がたくさんいる。困難な状況や複雑な意思決定に直面した時には、これらの人々に頼り、提案と意見を求める。自分だけで決める必要はないと知ることで、安心感を覚える。
・思想家(Thinker):思慮深い。素早く決定するよう求めるプレッシャーに抵抗する。選択肢を慎重に比較検討し、それぞれの良い点と悪い点を理解したい。大量のデータは必要ないが、選択の理由と、選択の妥当性を示す論理的根拠の両方が揃っているという納得感を得るための時間と心理状態を必要とする。スピードではなく、プロセス自体を目的とする。
・ビジョナリー(Visionary):平凡をよしとせず、自分流を貫きたい。一連の明白な選択肢がある場合、それらとは異なる、できれば誰も思い付いていない選択肢を探すことに興味がある。皆をハラハラさせ、意思決定で周囲を驚かせることも多い。
これらのプロファイルの中で、あなた自身と重なるのはどれだろうか。ほとんどの人は複数の問題解決者のタイプに当てはまるが、たいていは一つの支配的なアプローチに頼っている。自分のアプローチを最も的確に表す一つまたは複数のスタイルを特定したら、その範囲の内外で意思決定を向上させる方法を学ぶことができる。