
輝かしいはずの新しい戦略が、前回のものと同じようになりがちなのはなぜか。本稿では、「戦略ありき」の状況から抜け出すための方法を提示する。筆者は、企業が「戦略策定」から「戦略発見」へと、言葉や考え方を転換すべきだと主張する。またこのような転換を実現した事例も紹介する。
「戦略ありき」は成功の妨げになる
戦略とは、変化する状況に対応し、最新の競争優位を活用する方法を見出すために、インスピレーションに満ちた創造的な経営思考を必要とするものだ。では、なぜ輝かしいはずの新しい戦略は、前回のものと同じようになりがちなのか。
このことを一言で表現してくれたのが、フランクという男性だ。もう20年以上も前のことだが、昨日のことのように覚えている。エグゼクティブ14人が集まった戦略会議で、筆者はファシリテーターを務めていた。フリップチャートにホワイトボード、スクリーンも用意し、合意されたアジェンダに従っていた。
参加者の意見を聞いていたところ、突然、フランクがこう言った。「なぜ毎年このような戦略ワークショップをするのかわからない。毎回『いつも通り』になるのに」
この文脈で「いつも通り」という言葉を聞いたのは初めてだった。しかし、フランクは正しかった。以来、他のクライアントが同じ状況に陥っているのを何度も目にしてきた。戦略プランがお決まりのものになるのだ。
「戦略ありき」は、成功の妨げになる。ここでは、発想を「戦略策定」から「戦略発見」へと転換する方法を教えたい。また、「戦略ありき」のループから抜け出し、業界の外に目を向けた企業の事例も紹介する。