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企業は、音声アシスタントのアプリを開発することで、ユーザーに付加価値を提供し、開発コストに見合う企業価値の向上を実現することができるのか。本稿の筆者らは、音声アシスタントを用意した企業が、実際に企業価値を高めたかを算出した。その結果、音声アシスタントの「機能」と企業の「業態」が、企業価値向上の実現に関連していることが明らかになった。

音声アシスタントの成功は、機能の内容と企業の業態で決まる

 2021年のリポートによれば、米国のインターネットユーザーの約半分がスマートスピーカーを所有している。

 市場をリードするアマゾン・エコーやグーグル・ネストといったスマートスピーカーによって、消費者はオンラインでの注文からレシピの検索まで、あらゆることを自然言語で行うことができる。「オーケー、グーグル」や「アレクサ」と話しかけるだけで操作可能だ。

 一方、これらのスピーカーはプラットフォームとしての役割も果たす。アマゾン・ドットコムやグーグルが直接提供する機能以外にも、システム上でアプリ(エコーでは「スキル」、ネストでは「アクション」でお馴染み)を提供するサードパーティのサービスにユーザーが接続できる。

 たとえば、チポトレ(メキシコ料理店チェーン)のスキルに「アレクサ、直近のチポトレの注文を再注文して」、ワールプールのスキルに「アレクサ、洗濯機のコースを開始して」と指示すること、あるいはCNNのアクションに「ねえグーグル、最新のニュースは?」と尋ねることができる。

 企業にとってこの種の能力の構築は、新しいプラットフォームでユーザーとのエンゲージメントを築くため、ひいては市場での立ち位置をより強固にするため素晴らしい方法になりうる、というのが一般的な通念だ。

 ところが筆者らの最近の調査で、音声アシスタント機能の開発に伴う多大なコストが、得られるメリットに見合うとは限らないことが判明した。

 筆者らはこれらのアプリの付加価値を調べるために、2016〜20年の間にアマゾン・エコーまたはグーグル・ネストの音声アシスタント機能をリリースした全112社の株価データを収集した。その後、音声アシスタントに関する発表の影響を分離するため、音声アシスタント機能のリリースと決算発表が同時に行われた企業のデータを除外したところ、96社のデータセットが残った。

 これらの企業を対象に、新機能発表の直前と直後の株価を比較することで、各社のリリースに対する投資家たちの反応を数値化することができた。すると意外なことに、音声アシスタントのリリース後に評価額が上がった企業がある一方で、まったく上がらない、もしくは顕著な下落を見せた企業もあったのだ。

 なぜ、このように反応が分かれたのか。市場の反応に影響を及ぼしたのは、音声アシスタント機能のタイプと、企業の業態の両方であることが、さらなる分析によって判明した。