情報を提供する音声アシスタントは、企業価値を押し上げる

 企業が情報提供のための音声アシスタント機能を発表した後、株価は平均1%上昇、平均時価総額でおよそ9億2500万ドル増加していた。この機能は、ユーザーが自動的にキュレーションされたコンテンツをリクエストしたり、会話による質問と答えのやり取りをしたりすることで情報にアクセスできるアプリを指す。

 たとえば、CNNのアクションはパーソナライズされた一連のニュースの概要を伝え、WebMDのアクションは健康に関する助言を提供する。オールレシピズのスキルは料理に関する質問に答え、レシピの手順を段階ごとに読み上げることもできる。

 重要な点は、これらの機能を適用できるのが、何らかのコンテンツを主力商品とする企業だけではないということだ。物理的な製品を売る事業者も、情報提供用の音声機能からメリットを得ることができる。例として、ある芝刈り機製造会社が開発したスキルは、メンテナンス情報を提供し、オイル交換の手順を案内するものだ。

機器を操作する機能が企業価値に及ぼす影響はごくわずか

 情報提供機能とは対照的に、企業が機器操作のための機能を発表した際には、株価に顕著な影響はないことがわかった。機器操作機能は、アレクサに洗濯機の始動やエアコンの調整をさせるなど、自宅にある物理的なモノの操作を可能にする。このような機能は便利な場合もあるが、いくつかの本質的な限界が普及を阻んでいる。

 第1に、これらのツールでは概して、限られた範囲の機能しか操作できない。したがって、用意されているすべての機能をユーザーが利用するためには、いまだに機器を物理的に操作しなければならない。

 たとえば、ワールプールの音声アシスタントは洗濯を開始できるが、洗濯コースなどの設定を変更するには、ユーザーが洗濯機に備え付けの物理的なインターフェースを使わざるをえない。

 第2に、自然言語処理の技術は完璧からはほど遠いため、音声指示が誤認識されることがよくある。これは機器操作機能においては──たとえばオーブンを600度(摂氏315度)に設定するような場合──危険な状況を招きかねない。

 最後に、多くの機器は、音声指示で可能な操作よりもはるかに複雑な操作を必要とする。たとえば音声で起動するコンロは、水が沸騰したり料理が焦げたりする事前に知らせることがいまだにできず、利便性は低い。

 加えて、音声ソフトウェアが実際に付加価値をもたらす場合でも、その代償として、収益を生んでいる既存の製品や機能との食い合いや、それらの需要減を伴うことが多い。

 一例として、ティーボが自社のスマートテレビを操作するアレクサのスキルをリリースした時、一部の識者は、この機能のせいでティーボの既存の音声対応リモコンは廃れ、アマゾン・エコーの所有者はティーボのリモコンを買わなくなる可能性があると指摘した。

 これらの要因と、音声アシスタント開発の多大なコストに挟まれ、機器操作機能のリリースに対する潜在的にポジティブな市場反応は、ネガティブな副作用によって実質的に相殺されていることが明らかになった。