Evgeniy Shvets/Stocksy

米国では、2018年に採択された税法により、慈善団体が法人の議決権を100%保有することが可能になった。米アウトドア用品大手パタゴニアのように、慈善財団による所有という形態を選択する企業は、今後も増えることが予想される。本稿では、筆者らが「株主財団モデル」で先行するデンマーク、ドイツ、スイス、フランスの事例を研究して得た3つのインサイトを紹介する。

「株主財団モデル」の研究で得た3つのインサイト

 米アウトドア用品大手パタゴニアのオーナーであるイヴォン・シュイナードは、9月14日、保有するすべての議決権付き株式をパタゴニア・パーパス・トラストに寄贈すると発表した。無議決権株式はすべて、「環境危機と戦い、自然保護に取り組む」非営利団体ホールドファスト・コレクティブに寄贈するという。これはパタゴニアを、「長期的な活力と責任を犠牲にして、短期的な利益を確保するプレッシャー」から守ると同時に、環境保護という慈善活動に長期的に資金を提供することが目的だという。

 これまで、同じように所有構造を変更した米国企業は少なくない。ペンシルバニア州の家族所有の建設会社ハイ・インダストリーズ(2021年の売上高は5億7000万ドル)は、2022年、ハイ財団が支配権と所有権を引き継ぐと発表した。これは数年前まで不可能だった手法だ。

 1969年の税制改革法により、財団の企業所有権は20%までと制限されていたが、2018年に採択された税法により、慈善団体が法人の議決権を100%保有することが可能になった。したがって今後、このような財団はさらに増えることが予想される。

 米国以外では、この種の所有形態は新しいものではない。欧州では数十年前から「株主財団」が静かに増えていた。特にデンマークでは、大手企業100社のうち、4分の1が財団に所有されている。ビール醸造会社カールスバーグ、海運複合企業APモラー・マースク、そして製薬大手ノボノルディスクの3社も例外ではない。

 多くの場合、このようなイニシアティブの発案者は、シュイナードのような成功した高齢の創業者だ。みずからが保有する会社の所有権を、新たに設立された財団に寄贈して、ビジネスと慈善活動の両方で、長期的な安定を確保することが狙いだ。財団が議決権付き株式と普通株の両方を取得する場合もあれば、パタゴニアのようにそれぞれ別々の受け皿(議決権付き株式によって会社の支配権を維持する信託または持ち株会社と、普通株と慈善活動を持つ財団)が設けられる場合もある。

 筆者らは、慈善活動コンサルティング会社のプロフィルと協力して、デンマーク、ドイツ、スイス、フランスの株主財団を研究し、その運営方法について重要なインサイトを得た。