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営業職で成功するために必要な資質が変わりつつある。もちろん、営業経験やコミュニケーション能力、好奇心、モチベーションといったこれまで必要とされてきた資質やスキルは欠かせないが、営業職の求人情報2万件以上を分析したところ、新たに「未来志向の能力」が求められていることが明らかになった。本稿では、営業組織をデジタル時代の成功軌道に乗せるために必要な5つの能力を紐解く。企業が営業職の採用や能力開発のみならず、中央組織の設置を含めて、どのように営業担当者を支援すべきかを論じる。

経験の積み上げだけでは、なぜ足りないのか

 ある資産運用会社の営業リーダーが、しみじみと口にしたことがある。「うちのインサイドセールス(内勤営業)は、フィールドセールス(外勤営業)よりも優れた成果を上げています。フィールドセールスに対してインサイドセールスの報酬は3分の1なのですが」というのだ。

 製薬業界では、医師が営業担当者と対面で会うことを拒むようになったことから、「これまでとは違うタイプの、デジタルレベルの高い営業担当者が必要です」と、ある営業リーダーが筆者らに語った。

 筆者らのコンサルティング会社ZSのテクノロジーバイヤーは、あるベンダーについて、次のように不満を訴えた。「アリスは、カスタマーサクセス(CS)マネジャーという肩書きですが、事業拡大のチャンスを嗅ぎつけると、オフィスのドアを壊しそうな勢いで叩いて、私を訪ねてきます。ただの強引な営業です」

 どの業界でも、営業職で成功するために必要な資質が変わりつつある。そこで筆者らは、さらなるインサイトを得るために、2019~2022年の間にウェブに掲載された営業職の求人情報2万件以上からデータを収集した。その結果、昔から変わらず、営業職に求められている資質やスキルは、営業経験、コミュニケーション能力、好奇心、モチベーションなどであった。

 そして同時に、これらの営業職の求人広告から、新たに5つの能力が一貫して求められるようになっていることが明らかになった。