危険信号に気をつける
従業員がインポスターの感情をマネジャーに共有していない可能性があるため、どのような行動に注意すべきかを知っておく必要がある。長時間労働が続くなど、持続不可能な労働習慣はその明らかな兆候だ。その従業員が野心的なのか、それともインポスターの感情を埋め合わせているのかを話し合うことで、変化をもたらすことができるかもしれない。
また、社会集団から外れる、質問や発言をためらう、締め切りに遅れて言いわけすることを繰り返すなど、仕事への関与が弱まっている習慣にも注意が必要だ。これらはどれも、不安を隠そうとしているサインである可能性がある。早い段階から従業員と対話をすることで、自己不信が募るのを防ぐことができる。
業績、成長、進化を客観的にとらえる
インポスターの感情は、自分に対する見方や、自分と他者との比較に深く関わっている。インポスターであると感じている人は、自分はひどく能力が劣っているが、「自分以外の全員」は有能であると考えがちだ。
インポスターの感情を持つ人は、チャンスや困難な仕事をおそれることはないが、非現実的または偏った物差しと比較することで、自分の成功を測ろうとする傾向があるかもしれない。
マネジャーは、業績、成長、進化を、競争的ではなく、客観的にとらえることで、このような比較志向に対処することができる。業績に関するフィードバックは、公式なものも非公式なものも、従業員の組織内での「立場」についての不安を払拭する絶好の機会だ。
「成功するまでは、成功している振りをしなさい」という格言がある。あなたも不安を感じている人にこう助言したことがあるかもしれない。しかし、この格言の問題点は、インポスターの感情を持つ人に、実際に「振りをしている」のだと再認識させてしまうことだ。
重要なのは、「あなたは成功しているのだから、振りをする必要はない」と従業員に理解させることだ。彼らが成功を内面化し、学習と失敗は成長と進化の一部として見込まれていることを理解できるようにしなければならない。
メンターを賢く任命する
メンターシップがインポスターの感情に有効であることを筆者らは発見した。しかし、すべてのメンターが同じ効果を発揮するわけではなく、事態を悪化させてしまうメンターもいる。インポスターの感情を持つ人は、チームメンバーが自分をどう見ているかを気にしがちなため、評価とメンターシップが混在していると、特に大きなダメージを与えることにもなりかねない。
従業員にメンターをつける場合は、状況を理解していて、その従業員に対する評価とは関係のないチームからメンターを選ぶべきだ。それにより、メンターシップの関係からプレッシャーを取り除くことができる。
自分の職業上の不安を共有する
インポスターの感情をチームメンバーやリーダーに共有したことがあるかと尋ねると、ほぼ例外なく「ノー」という強い答えが返ってくる。しかし、インポスターの感情を持つ人に対して、どのように指導したかを尋ねると、多くの場合、自分の経験を共有し、その人が経験していることは普通のことであると理解できるよう、手助けをすると答える。
これは共有のパラドックスだ。人は他人のインポスターの感情について聞くことで利益を得るが、インポスターの感情を持っている人は、自分の苦労を共有することをためらうのだ。
インポスターの感情を持つことは特別なことではないとチーム内に共有することで、この問題に対処することができる。あなた自身の職業上の不安や失敗、特に有意義な方法で克服した失敗を共有すべきだ。
ジーア・ストームズはHBRの論文でこう記している。「過去の失敗談を語ることは、聞き手と良好な関係を築き、失敗しても問題ないという雰囲気をつくり出し、聞き手との絆を深める効果がある。とりわけ、失敗した後で、最後にはそれを跳ね返して成功できたというストーリーを語ることができれば、聞き手のやる気を喚起し、頑張り続けるよう促せる」
まとめると、マネジャーはインポスターの感情を持っている従業員を助ける(あるいは傷つける)重要な立場にあると筆者らは考えている。インポスターの感情を見抜くのは難しいが、上記の戦術を適用することで、マネジャーはチーム内のインポスターの感情を緩和し、従業員の自信を高めることができるはずだ。
"4 Ways to Combat Imposter Syndrome on Your Team," HBR.org, October 18, 2022.