
優秀な人材を昇進させられないジレンマ
多くの職場環境において、昇進はキャリアの成功と発展を示す数少ない指標の一つである。
しかし、昇進には長いフィードバックループが伴う。決定までに数年を要することも多々あり、昇進前までの数ヶ月あるいは数年にわたる従業員の成長が報われな
また、昇進は従業員自身やマネジャーがすべてコントロールできるものではない。より上位の仕事に空きがなかったり、リーダー職の数が限られている場合もある。
結局のところ、組織は全従業員を昇進させることはできない。昇進が不可能あるいは昇進を待たざるをえないという状況下で、昇進を望んでいる業績優秀者は常にいるものだ。最高の人材をつなぎ留めておきたいマネジャーにとって、これは問題だ。最近のある調査では、従業員が自主退職する最大の理由は、キャリアの流動性の欠如であることが明らかになっている。
昇進できない従業員を支援するために、マネジャーは何をすべきか
昇進できないという理由で有能な従業員が意欲を失っている時、マネジャーは彼らの根底にあるニーズに応えるために、暫定的な対策を講じる必要がある。
第1に、たとえ業績優秀者であっても、何らかのスキルや実績が不足しているために、望み通りに昇進できないのかもしれない。それらのスキルや経験の不足に対処して改善できる方法がある場合、当人と話をして意見を共有しよう。改善方法に関するこちらの意見を相手が受け止めて整理できるよう時間を与え、昇進の要望自体には何も問題がないことを対話の中ではっきり伝えるとよい。
その後、当人にとって昇進が実際に何を意味するのかを掘り下げていこう。以下のいずれかの組み合わせか、あるいはまったく別の何かかもしれない。
・職場での地位
・職業的地位
・公の場で評価される形で与えられる報酬
・責任範囲の拡大
・部門や組織における影響力の拡大
・より広範な結果に対する影響力の増大を認識できる機会
・部下をマネジメントする機会
・金銭的報酬の増加
個々の従業員にとって昇進は何を意味するのか、何を可能にするのかを絞り込むことで、マネジャーは各人の有意義な仕事体験につながる機会を探すことができる。たとえば、多くの人にとって昇給は最大のモチベーション要因かもしれない。自社の報酬制度において許されるマネジャーの裁量の範囲内で、昇進を見送られた業績優秀者に対し、金銭的報酬の大幅な増額を検討してもよい。
ほかの例も考えてみよう。