従業員が仕事の一環として、より強い影響力を持つことを望んでいる場合、顧客とステークホルダーに対する影響力の強化をマネジャーはどのように後押しできるか自問してみよう。リーダー陣の考えがわかり、プロジェクトの今後の方向性が見えるような会議にその従業員が参加できる機会はあるだろうか。

 あるいは、従業員は公の場でさらに評価されたいのかもしれない。彼らの仕事をより目立たせ、称賛されるようにする機会はあるだろうか。プロフェッショナルを対象とする賞への応募や推薦は可能だろうか。彼らの貢献を、公的なコミュニケーションチャネルで発表してはどうだろうか。

 最後の例として、部下を持つマネジャーになることが従業員にとっては重要なのかもしれない。正式にマネジャーに昇進させる前に、チームの非公式なリーダーに任命できるか検討しよう。チームの採用担当や若手社員へのコーチングといった、マネジメント業務の経験をさらに積ませる機会はあるだろうか。

 なお、重要な注意点がある。マネジャーは従業員と協力して、彼らの根底にあるモチベーションに見合った仕事体験を創出するに当たり、昇進を無期限に待ってもらうことを期待してはならない。能力開発を後押しするフィードバックを提供し、昇進の意思決定をめぐる現実について可能な限り情報を開示しよう。不満を抱えた業績優秀者の根本的ニーズを支援するための対策は、短期的には大いに効果的だが、彼らの昇進を推奨する努力も並行して行うべきである。

なぜ、このアプローチが効果的なのか

 自分のキャリアにおいて、何が重要なのか。この点を掘り下げて話すよう従業員に促すことで、当人に適したキャリアの設計を支援するための、より繊細なアプローチを取ることができる。

 また、根底にあるモチベーションについて話し合うことで、昇進が可能か否かにかかわらず、「自分の意見に耳が傾けられている」という感覚を業績優秀者にもたらすことができる。その結果、マネジャーの立場は「門番」ではなく、キャリアの成功に向けて取り組む積極的なパートナーとなるのだ。


"How to Motivate a Top Performer - When You Can't Promote Them," HBR.org, January 04, 2023.