
新たな勝者になるのは
メリハリある提案をする組織
景気が減速する中、大規模なレイオフの発表が続いている。たとえば、ゴールドマン・サックス(3200人)、プラット・アンド・ホイットニー(900人)、ユナイテッド・ファニチャー・インダストリー(2700人)、メタ・プラットフォームズ(1万1000人)などだ。もしあなたがB2Bの営業担当者であり、顧客がコスト削減の真っ最中である場合、どのように対応すべきなのだろうか。
多くの組織では、レイオフの発表に伴って営業部隊を縮小している。また、営業担当者の採用を停止するところもある。そして、どの営業組織も戦略と規模を再検討している。
筆者らの考えでは、営業部隊の縮小と採用停止をまんべんなく画一的に行う、いわゆるピーナツバター方式は最も愚かな戦略である。新たな勝者になるのは、自社の商品や市場の強みに加え、先行き不透明な状況が顧客に及ぼす影響を考慮して、メリハリのあるアプローチを取る組織だ。
たとえば、アルファベット(グーグルの親会社)が予想を下回る第3四半期の収益を発表した際、CEOのサンダー・ピチャイは、同社が「優先すべき商品と事業を明確にして重点分野を絞り込んでいる」と主張した。グーグルは、コスト削減やリストラクチャリング、リソースの再配分を通して「効率を20%向上」させようとしているのだ。
意外かもしれないが、現在の状況では、好調な事業と不振に陥っている事業の両方で、それぞれの営業部隊にチャンスが生まれている。以下では、それについて詳しく見ていこう。
買い手の思考は、2つの面で変化している。焦点を当てる時間の範囲と価値の定義である。多くの企業にとって2021年がそうであったように、順調な時であれば「現在」は保証され、「近未来」は楽観視され、「遠い将来」は有望視される。
しかし、経済がぐらつくと、「現在」は停滞し、「近未来」は不確実とされ、「遠い未来」は不明瞭になる。買い手は短期的なことへ労力をかけるよう方向転換し、長期的なことへの関心が薄れる。(サービスや商品の)購入が長期的な収益の増加につながるという展望は、短期的な生産性向上が証明できなければ説得力に欠ける。買い手の関心はまだ、「ビタミン剤」よりも「鎮痛剤」にあるのだ。
営業担当者は先を見越して
顧客に合ったアプローチを取るべき
ある営業リーダーがこう言った。「去年は、魚のほうから船に飛び込んできました。今年は漁にいかなければなりません」。営業担当者は、みずからをより差別化し、先を見据えたアプローチを取る必要がある。
売り手が競合よりも強力な商材を持っていて、顧客が景気減速の中でも業績を上げる準備ができているならば(たとえば、銀行は利上げが有利に働くことが多い)、強気に出て成長のチャンスを探すのが正解だ。商品とサービスのイノベーションを促進しながら新しいチャンスと顧客を積極的に求めれば、リーチを拡大して市場シェアを伸ばすことができる。
筆者らの予想では、グーグルは重点分野(クラウド、検索、ユーチューブ)の顧客対応部門を拡大していき、そのためには、ほかの事業を縮小して、顧客対応以外のポジションを減らすこともいとわないのではないかと考えている。急成長中のクラウドビジネスに重点的な投資を続ける決断をするのは、明らかである。
検索は、メリハリをつけたアプローチが必要な事業の好例である。検索の広告収益は、保険やローン、住宅ローンなどの分野で激減した。グーグルはこうした分野の広告営業を減らし、高成長分野への投資を増やすだろう。ところかまわず投資を削減するのは、誤ったアプローチでしかない。