タスクやプロジェクトを棚卸しする

 これは、当たり前であるにもかかわらず、実践されていないことである。もし従業員が自分の果たすべき約束やプロジェクトをリスト化していないなら、現実的に優先順位をつけることはできないだろう。リーダーは部下に対して、最新の「やることリスト」を作成させ、週に1回、そのリストを徹底して振り返る時間を与え、自分で自分の状況をコントロールできるようにすべきである。

コミュニケーションチャネルを明確にして整理する

 集中力を削ぐ原因の大半を占めているのは、一般的な職場で利用している社内のコミュニケーションチャネルが多すぎることだ。もちろん、各チャネルで実際に処理すべき内容が多いのは言うまでもない。それぞれのコミュニケーションチャネルの利用目的や期待される応答時間を明確にしよう。

当たり前に「ノー」を言えるようにする

 「押し潰されそう」「燃え尽きそう」と口に出せるような、心理的安全性が確保された環境をつくるのが、リーダーの務めだ。カスタムソフトウェア開発会社メンロ・イノベーションのCEOリッチ・シェリダンは、その好例である。従業員が自分に余力があるかどうかを伝えることがいかに大切かをシェリダンは理解している。率直に訴えることを従業員に勧めるだけではなく、それを当たり前のこととし、報酬を与えている。

 シェリダンはプロジェクトマネジャーに、従業員がもう余力がない、あるいは燃え尽きたと訴えてきたら、「言いづらいことを知らせてくれてありがとう」と笑顔で言いなさいと教えている。それはなぜか。「ほとんどのリーダーは、よくない知らせをもみ消そうとします。でも、それで悪い知らせが消えてなくなるわけではありません。むしろ口に出せないという文化が蔓延することで、品質やモラルに関わる問題を生み出し、無限に残業が増えていくことになります」とシェリダンは言う。

 ノーと言えることを当たり前のこととし、従業員が自分の状態を安心して伝えられるようにすることが大切だ。思慮深い反応をすることで、その行動に報いよう。

会議を有意義なものにする

 就業時間が会議で埋まってしまうという人は多い。従業員が仕事に集中できるように、無意味な会議への出席を辞退できるようにしよう。筆者らのクライアントのあるマネジャーは、会議の効率を向上させるために大胆な前例をつくった。「もし明確な議題がなく、会議の成功にあなたが不可欠だという理由もないのに出席を求められたら、辞退することを許可します」と言ったのである。

 彼は会議の主催者(彼自身であることが多い)に、他人の時間を尊重する責任を負わせたのだ。また、そうすることで、従業員が自分の就業時間を管理し、優先度の高い仕事に集中できるようにした。

目的意識を持った時間の使い方で生産性を高める

 毎週の一対一のミーティングでは、部下に「忙しい」かどうかを聞いてはいけない。むしろ、やるべき仕事ややりたい仕事をする時間と余裕があるかどうかを質問する。ないと言われたら、そのギャップに対処できるようにサポートしよう。

 部下はやることリストの優先順位をつける手助けが必要なのかもしれない。あるいは重要性の低いプロジェクトやタスクに参加を求められ、そこから離脱できるよう助けてほしいのかもしれない。また集中できる仕事時間を確保するため、カレンダーに予定を書き込まれないようにしたいのかもしれないし、途切れなく集中して仕事ができるように、時間を調整する必要があるのかもしれない。ギャップを見つけて、それを埋めることが大切だ。

集中する時間を定める

 仕事への集中を促す最も簡単な方法は、カレンダーに書くことである。作業時間を確保するためのチームの規範をつくろう。たとえば、火曜と木曜の午後は集中的に仕事をする時間として、他の予定を入れないようにブロックする。この時間は、誰も会議の予定を入れてはならないし、組織の他の部署にも彼らが対応できないことを示す。ただし、注意点がある。もしあなたがブロックした時間に予定を入れるつもりなら、最初からブロックすべきではない。あなたのカレンダーが信頼されなくなるだけだ。

境界線を尊重する

 従業員がチームのチャットツールのステータスやカレンダーで、集中的に仕事をするモードに入ったことを示したら、それを尊重しよう。リーダーであるあなたは、このルールが全員に適用されても自分は例外だと思うかもしれない。だが、あなたがこの時間に部下の集中をさえぎったとたん、誰でも同じように行動してよいことになってしまう。集中する時間を確保するといっても形式的なものであって、誰でもさえぎってよいというメッセージを送ることになるのだ。

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 以上の7つの取り組みは、チームのメンバーが本当に重要な仕事に集中できる文化を築く助けになるだろう。リーダーがこうした原則を理解することは、極めて重要である。注意散漫になるようにできている世界の中で、チームが効率よく仕事に打ち込めるようになるからだ。部下が集中できるようにサポートすれば、すべての人にメリットをもたらすだろう。


"7 Ways Managers Can Help Their Team Focus," HBR.org, January 24, 2023.