部署の仕事を会社のニーズと明確に結びつける
失われた影響力を取り戻す方法の一つは、あなたのチームと組めば会社全体に利益がもたらされると示すことだ。あなたの部署が間接部門の場合は、積極的にビジネス感覚を養い、部内だけで通用する「方言」ではなく、企業価値という全社全体に通用する言葉で、メッセージを発信し続けることが必要だ。
筆者のエグゼクティブコーチングのクライアントに、HR部門のバイスプレジデントに着任したばかりの女性がいた。伝統的にHR部門とは、企業の戦略に関わる問題では無視され、基本的な戦術ニーズやコンプライアンスに関わる必要がある時だけ頼りにされるチームだ。
このバイスプレジデントは、会社の将来を左右する人材という課題に関して、HR部門の戦略的価値を高めるべく、2方面からのアプローチを用いた。第1に、HR部門のスタッフが、自分の仕事を会社のニーズと結びつけて考え、話し、行動できるように、能力開発に力を入れた。
第2に、HR部門が重要な戦略的価値を提供できる問題に関して、リーダーシップチームのメンバーである同僚の関心を集め、その問題を喫緊の問題として認識してもらえるように注力した。たとえば、現在の変わりやすい雇用市場では、人材の採用、能力開発、定着、承継計画に関する緊急のイニシアティブを立ち上げることが、会社の業績のためにも競争力を維持するためにも極めて重要だった。
社内の「顧客」に対して、HR部門のブランドを積極的に管理しつつ、部門内のスキルアップを図った結果、他部門とのコラボレーションが活発化し、より賢明で思慮深い意思決定がなされ、HR部門のエンゲージメントとモチベーションが高まった。
周囲から見た自分自身の価値を高める
あなたは、仕事上の肩書や所属する部署以上の存在であることを思い出してほしい。会社の他部門から以前のように声がかからなくなったからといって、また声がかかるようになるのをぼんやりと待っている必要はない。
自分の知識と学んだことを駆使して、みずからのストーリーを伝え、見返りを期待せずに認知度を高める。あなたが発信するアイデアに触れているうちに、あなたの助言を求めようという暗黙のニーズが生まれるはずだ。
筆者のコーチングのクライアントに、フォーチュン500の経営戦略およびM&A担当バイスプレジデントがいた。彼の会社に潤沢な資金があり、相次いで企業買収を行ない、急成長を遂げていた時は、彼の社内での影響力は非常に大きかった。ところが近年、コスト削減と不安定な経済情勢のために、M&A部門の活動は大幅に縮小してしまった。
このことが自分のキャリアに与える影響を考えて、数カ月悶々とした末に、彼は市場と経営戦略に関する専門知識を活かして、自分のアイデアやアドバイスを紹介するニュースレターを発行することにした。
本来は付随的に始めた活動だったが、このニュースレターが、部門の内外から「専門家で、影響力のある人物」として認めてもらうツールとなった。彼自身も、目的意識と自己効力感を取り戻し、士気が低くなりがちな時でも、仕事へのモチベーションを維持することができた。また、この取り組みから同僚との新しいアライアンスが生まれ、今後影響力を発揮したり、貢献したりする道が開けそうだという。