誰も注目してくれないと感じても
結果重視の仕事を続ける

 組織において、パワーの所在は状況によって変化する。それゆえ、あなたの部署の影響力が乏しい状態も、永遠には続かない可能性が高い。自社の関連する業界や市場の動向に応じて、会社の重点領域は変わり、かつては最も目立つ存在だった部署の影が薄くなり、それ以外の部署が台頭するだろう。だが、自分自身が十分活用されていない時に、どのように行動するかが、将来のあなたの影響力を助けるか、妨げるかを決めることになる。

 ある研究によると、職場で蚊帳の外に置かれた場合の反応には、3通りある。向社会的(より役に立つ方法を探す)か、反社会的(相手に報復したり、誰かを仲間外れにしたりする方法を探す)か、孤独を求めるか、だ。

 社会的帰属は人間の最大の欲求の一つだが、その欲求が満たされない時、職場における自分の潜在的影響力を制限するような反応をしてしまうことがある。

 たとえば、腹いせに誰かを排除したり、孤立することを選んだりすると、自分が主流から外された苦しみは取り除けるかもしれないが、周囲に支持されるリーダーと見なされる可能性は低くなる。逆に、目の前の仕事に集中しつつも、向社会的な行動を取ると、自分が見過ごされている時も被害者意識を持たず、自分のキャリアに対して主体性を持てる。

 また、自分が蚊帳の外に置かれていると最も感じる時に、取り残された人に手を差し伸べたり、互いに有益な取り組みの機会を探ったりすることで、力がみなぎってくることがある。

 筆者はよく、自分自身のことを現在の職務や部署だけでなく、会社にとって価値の高い資産だと考えるように、リーダーに助言している。結局のところ、最も洗練された組織は、ハイパフォーマーだけでなく、最もポテンシャルの高いプレーヤーを見極めるものだ。重要なのは、現在のポジションにおいてだけでなく、会社全体、そして会社の将来にインパクトを与えられる一握りの重要な人材かどうか、である。

 したがって、現在のポジションを超えた成功者のマインドセットで仕事をすれば、大きな変化を生み出すチャンスを引き寄せることができるだろう。そして、環境が変わった時(そうなるのは確実だ)、あなたの「結果と人間関係を重視するリーダー」というポジティブなブランドは、変わらずに維持できるだろう。

後輩を育てる

 成功を追い求めているのに、扉を閉ざされてしまって、失望した時には、振り返って後に続く者に扉を開くことが、あなた自身に力を与える場合がある。誰に仲間に加えられようと、あるいは仲間外れにされようと、あなたはいつも現在の場所から他者をリードすることを選べるのだ。そうすることによって、次世代の人材の間で自分の影響力を高めることができる。

 筆者のコーチングのクライアントに、あるグローバルな投資会社のマネージングディレクターに新規採用された人物がいた。彼の仕事は、投資案件を継続的に探し出して、経営委員会に説明し、承認された案件を実行することだった。

 彼はパートナーへの昇進を希望していたが、それはどれだけたくさんの投資を実現できるかによって決まった。彼は記録的な数の案件を経営委員会に提案したが、そのほとんどについて承認を得られなかった。この会社で昇進するチャンスが残されているのか不安に駆られる中、彼は自分の成功の定義を拡大することにした。「投資案件の流れをコントロールできなければ、どうして本物のリーダーになれるだろうか」

 自社のパートナーやオーナーの立場で考えることにより、彼は投資案件の数だけでなく、将来の人材育成も成功の定義に含めることにした。そこで、ビジネスを開拓する仕事と並行して、ジュニアアソシエートに向けて、よりよい投資案件の開拓につながる顧客との関係づくりについてコーチングをする取り組みを始めた。その結果、経営委員会に投資提案が承認されなくても、社内で影響力のある人物という明確な認識がもたらされた。

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 ビジネスニーズや職場の人間関係は継続的に変化しているため、特定の部署の影響力も相対的に変化し、取り残されて何もできないかのように感じられることがある。だが、そのような時であっても、本稿に示したアドバイスに従えば、自分自身の価値を高め、将来的により大きな影響力を発揮できるはずだ。


"Does It Feel Like Your Department Has Been Sidelined?" HBR.org, January 20, 2023.