コーポレートバリューはなぜ機能しないのか

 現代の経営環境はVUCA(変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)と呼ばれるように、変化が極めて激しく予測不可能である。このような環境下で、「コーポレートバリュー」の重要性がますます高まっている。

 コーポレートバリューとは、企業が最も重視する規範や原理の源流となる根源的価値観である。組織の根幹を成す遺伝子であり、各社固有の存在意義(レゾンデートル)といえる。コーポレートバリューは内発的に形成され、さまざまな手段によって組織に実装され、企業の意思決定や行動を決定付ける。

 たとえば、価値観を基軸とした経営は、組織の構成員が環境変化に柔軟に適応するうえで重要な多様性を担保すると同時に、組織の一体性を保持する助けとなる[注1]。また、コーポレートバリューは機動的な意思決定に不可欠な思考の軸となる。構成員が共通の価値観を共有することで、事業領域を柔軟に再定義し、自社の商品、サービス、事業モデルを機動的に組み替えられるようになるためである[注2]