責任感と思いやりが調和したチームをいかに構築すべきか
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サマリー:チームや個々のメンバーに、仕事への責任感を持ってもらうと同時に、思いやりのある環境を構築するにはどうしたらよいのだろうか。厳しさ優しさを同居させ、バランスを取ることはリーダーにとって簡単なことではない... もっと見る。本稿では、責任と思いやりを調和させるための方法を紹介する。責任を負わせるばかりではなく、一方で思いやるばかりでもない、力点を置く部分や、行動指針を解説する。 閉じる

責任と思いやりが調和したチームをつくる

 あなたのチームには達成すべきことが数多くあり、同僚を失望させるような人をメンバーに迎える余裕はない。みずからの責任を理解し、職務を遂行する義務を感じている人々、つまり、責任感を持つ人々で構成されたチームが必要だ。しかし、責任あるチームをつくることは、口で言うほど簡単ではない。

 他者に責任感を持たせることはできない。責任感とは感情だからだ。もちろん、インセンティブや報酬を用いてそれを強要することは可能だ。あるいは、脅しや罰則を使ったり、不機嫌な視線を向けたりすることで責任を感じるよう仕向けることもできる(こうした方法を試そうとしているのはあなただけではない)。

 残念ながら、責任にまつわる言葉や比喩は、こうした罰則的なアプローチを連想させる。「やっかいな義務を負った」状態を示す「on the hook」(釣り針にかかった)という言い回しは、従業員を逃げ場のなくなった魚のように表現している。さらに、「一者に責任を負わせる」という意味で「one throat to choke」(絞めるべき一つの喉)という表現をリーダーが使うのをよく耳にする。これらの言葉が表すのは、恐怖であり、責任ではない。

 あなたが取り組むべきは、恐怖ではなく、思いやりによって責任感を生み出すことだ。思いやりのあるマネジャーのいるチームは、苦悩することが許され、理解され、さらには受け入れられることを知っている。共感的なマネジャーは、状況が許す限り、チームに対する期待に応えることができる。

 しかし、リーダーシップの多くの行動と同様に、よいことが過剰であるのは問題だ。つまり、思いやりに偏りすぎると、親切であることが必ずしもよいとは限らないという点を見逃してしまう。では、責任と思いやりを調和させるには、どうすればよいのだろう。以下に紹介するのは、チームに弱さと責任感を同時に植えつけるためのテクニックだ。

思いやりを示しながら責任感を育む方法

明確な期待を設定する

 すべては明確な期待を設定し、それを共有することから始まる。事前の対話を怠り、「なぜ」「何を」「誰が」という問いに答えなければ、従業員のアウトプットが的外れなものになってしまう。そうなると、チームが時間と労力を費やしたのちに介入せざるを得なくなり、士気が低下してしまう(非効率的なのは言うまでもない)。

 期待を明確にすることで、責任感を育まなくてはならない。一つ助言すると、明確な期待というものには、形容詞がない。形容詞はわかりにくく、信頼性に欠け、不明確にする。「革新的になる」「タイムリーである」「協働的になる」など、各自が思い描くイメージが大きく異なる言葉は、部下にとって責任を負うことは困難だ。

 形容詞は、名詞と動詞に置き換える。たとえば「協働的」ではなく、「機会に対するマーケティングの評価を必ず得て、それをあなたの分析に反映させる」とする。期待を設定することは、懲罰的な責任感ではなく、積極的な責任感を生み出す最善のアプローチだ。

注視し続ける

 次のステップは、全員が進捗を確認できるプロセスやツールを設けることだ。チームの全員が進捗状況を見ていることがわかっていれば、責任感が高まる。

 チームが同じ場所にいる場合は、コマンドセンターを活用し、それぞれの責任を視覚的に確認できるようにし、達成したマイルストーンを追跡できるようにする。リモートチームやハイブリッドチームの場合は、デジタルロードマップ、進捗管理ツール、ホワイトボードを活用することができる。

 可視化するだけでなく、1on1やチームのミーティングを実施して、進捗状況を確認し、懸念事項や問題を表面化させる機会にしなければならない。

心理的安全性を確保する

 どれだけ明確に期待を設定し、進捗状況を監視しても、完璧を求めるべきではない。責任を持つことを促す次のステップは、心理的安全性を確保して、従業員が苦悩を共有できるようにすることだ。

 完璧であることが唯一の選択肢だと、従業員のなかには責任を果たせないと感じてしまう人がいるかもしれない。チームに困難を共有するよう促すと、問題を明確に理解し、実行可能な解決策につながるコーチングを行う機会を得ることができる。

 ただ、注意すべきことがある。コーチングを行うことは有益だが、彼らの問題をあなたが解決すると、責任感を高めるどころか失わせてしまう。なぜならそれは、従業員に対して、責任はあなたが負い、彼らは負う必要がないと示すことになるからだ。さらに悪いことに、チームメンバーの手助けをすると、あなたがメンバーを信頼していないという印象を与え、責任と思いやりが一挙に損なわれてしまう。

 不安を避けようとするのではなく、たとえば「今回のローンチがこれまでで最も困難なものだというのは、私も同意見です。だから、あなたに担当してもらったのです。悩んでいることを教えてください」と伝え、それに向き合うよう促す。重要なのは、彼らの苦労を認めつつ、成し遂げられるとあなたが信じていることを示すことだ。